「家族4人、一戸建てを持つサラリーマンの佐藤さん」の節税を考えてみよう!
2015年の1月1日から、相続税の制度が変わったので多くの人に相続税がかかるようになっています。そこで今回は、
- 郊外の住宅地に40坪の一戸建てを持つ
- 一般企業のサラリーマンである佐藤さん58歳
- 所有している財産は、土地が3000万円、家屋が2500万円、預貯金合わせて3000万円、本人が亡くなったときに出る生命保険金1500万円
- 相続人の資格を持つのは、奥さんと28歳の長男、25歳の長女の合計3人
というよくあるケースを使って、どんな節税ができるのか考えてみます。
まずはなにも節税しなかった場合の相続税を計算して、対策をするとどれくらいの効果があるのか確かめてみましょう。
節税しない場合の相続税を計算してみよう!
佐藤さんが亡くなったときの相続財産の総額は、1億円です。
遺言はなく、遺族は法定相続分通り、佐藤さんの奥さんが半分を、長男と長女は残りの半分を分割して1/4相続する場合、
課税される遺産の総額
遺産の総額-基礎控除=1億円-3000万円+(600万円×3人)=5200万円
- 奥さんの相続税額
相続の取得金額×税率(-税率によっては控除)=2600万円×15%-50万円=340万円
- 長男と長女の相続税額の合計
(1300万円×15%-50万円)×2人分=290万円
つまり、総額で630万円の相続税を支払わなくてはなりません。
ここから、節税対策を一つ行った場合をやってみます。
生前贈与で現金資産を減らす
佐藤さんは亡くなる7年前に節税を思い立ち、そこから3年間毎年100万円ずつ奥さん、息子、娘の3人に贈与しました。年間110万円以下の贈与なので、贈与税はかかりません。
この場合、佐藤さんの預貯金が900万円分減ることになるので、課税される遺産総額は5200万円から4300万円になります。
計算をしてみると、
- 奥さんの相続税額
2150万円×15%-50万円=272万5000円
- 長男長女の相続税額の合計
(1075万円×15%-50万円)×2人分=222万5000円
しめて495万円、生前贈与で現金を動かしたことによって、135万円の節税となりました。
生命保険の非課税枠を使う
佐藤さんが亡くなったときに支払われる生命保険は、総額で1500万円です。
相続税では、相続人1人あたり500万円までの生命保険や死亡退職金は非課税にできるので、
土地建物の合計額8500万円+生命保険1500万円-生命保険の非課税枠(500万円×3人)=8500万円
課税される遺産の総額
8500万円-4800万円=3700万円
- 奥さんの相続税額
1850万円×15%-50万円=227万5000円
- 長男長女の相続税額の合計
925万円×10%×2人分=185万円
生命保険の非課税枠を使うと、なにもしなかったときと比べて217万5000円の節税ができました。
小規模宅地等の特例を使って奥さんが家を相続する
実家に家族4人で住んでいたとすると、小規模宅地等の特例を使うことができます。
これは、住むために使っていた土地建物や条件を満たすお店などの評価額を8割から5割割り引きできる制度です。
奥さんが5500万円分の実家を相続すると考えると、評価額を8割引きできるので、
自宅の評価額
5500万円×(1-0.8)=1100万円
課税される遺産の総額
(1100万円+3000万円+1500万円)-4800万円=800万円
- 奥さんの相続税額
400万円×10%=40万円
- 長男長女の相続税額の合計
200万円×10%×2人分=40万円
5500万円の実家が1100万円まで圧縮できたので、相続税額は630万円から80万円、つまり550万円も節税できました。
配偶者控除を使う
佐藤さんの配偶者である奥さんは、配偶者の税額軽減制度を利用できます。
1億6000万円以下の相続か、もしくは法定相続分以下の相続である場合、相続税はゼロになるので、
課税される遺産の総額
1億円-4800万円=5200万円
- 奥さんの相続税額
相続財産は2600万円分、1億6000万円より少ないので、0円
- 長男と長女の相続税額の合計
(1300万円×15%-50万円)×2人分=290万円
というふうに、家族の合計額では相続税を290万円に抑えられました。
340万円分の節税に成功です。
全て使ってみるとどうなる?
では、900万円分の生前贈与と、生命保険の非課税枠、小規模宅地等の特例に配偶者控除を使うとどうなるでしょうか。想像はつくと思いますが、やってみます。
実家の土地建物
5500万円×(1-0.8)=1100万円
預貯金
3000万円-900万円=2100万円
生命保険
1500万円-(500万円×3人)=0円
課税される遺産の総額
1100万円+2100万円+0円=3200万円
3200万円-基礎控除4800万円=0円
課税される遺産総額よりも基礎控除のほうが大きくなってしまったので、佐藤さんの遺産相続をするために相続税を支払う必要がなくなりました。
630万円の節税です。
このように、相続税の対策は組み合わせることで大きな効果を発揮します。
今回はあっさり相続税が0円になったので使いませんでしたが、例えば実家の相続は小規模宅地等の特例を使って長男か長女に相続させ、佐藤さんの奥さんは配偶者の税額軽減を使って、さらに節税をする、といったことも可能です。
実際にはもっと細かく考える必要があったり、遺産分割の話し合いが難航する場合もあるので、もっと詳しく知りたいときは税理士や弁護士までご相談ください。
最近のコメント