多数の不動産所有の資産家を悩ます、相続税現金一括納付

「不動産をたくさん持っている人」向け相続税対策

先祖代々の相続や自身の財テクのために、駐車場や賃貸マンション、空き地、山などさまざまな不動産を持っている。比較してみると現金より不動産のほうがたくさんあるという人は、相続税の課税対象になりやすく、また遺族は相続税の納税で苦労することになるので節税が欠かせません。

現金一括納付という恐ろしい相続税の申告と納税を乗り切るために、今回は、駅前の賃貸マンションから空き地まで、複数の不動産を持つ田中さんをテーマに節税を考えてみましょう。

サラリーマンの相続税では不動産の数が少なく、節税をしないといくらかかるかなどが計算しやすかったので比較していますが、不動産の場合一つ一つで評価額や使える節税方法が違うので、今回は使える節税方法をいくつかピックアップして紹介します。

賃貸物件を用意する

空き地の活用という考え方があります。

相続税の計算上、空き地だと評価額がとても高くなってしまうので、なににも使っていない土地がある場合、何らかの形で活用すると相続税が安くなります。

田中さんが3000万円の空き地を持っているとします。

案外良い立地条件だったので、田中さんは1億5000万円の賃貸マンションを建設することにしました。

1億5000万円の現金を使って建てたマンションの評価額は、固定資産税から考えるので、大体6割から7割です。賃貸用なのでさらに3割引きの評価になり、

1億5000万円×0.7×0.7=7350万円

くらいになります。

賃貸物件を立てた土地も評価額が2割引きされるので、

3000万円×0.8=2400万円

になります。

つまり、1億8000万円の資産を、およそ1億円くらいの資産として相続させることができるのです。土地だけ切り取ってみても、なにもしなかった場合に比べて評価額600万円分の節税ができます。

資産の組み換えを考える

持っていてもあまり活用できない不動産がある場合、また不動産の数が多すぎて誰にどう相続させて良いやら考えるのが面倒だ、という場合、資産の組み換えを使って節税をする方法があります。

基本的には、空き地にマンションを建てるように、「現金を使って不動産を増やす」か、「必要のない不動産、使いづらい不動産を売却して別の不動産を購入する」ことになります。

例えば、田中さんが駅から歩いて2時間という驚異的に使いづらい空き地ABCDを持っていたとします。それぞれの土地には2000万円の価値があるとすると、合計すれば8000万円×税率の相続税がかかることになりますよね。

そこで、田中さんは土地ABCDを全て売却し、1億円の現金に替えました。

この現金を元手にして、改めて駅から近いがちょっと狭い土地EFを計4000万円で手に入れ、残ったお金で小さめの賃貸アパートを1棟ずつ建てました。

すると、元々8000万円分の価値があった土地ABCDは、2つの土地、2つの賃貸アパートに姿を変えたので、ざっくりと6000万円くらいの評価額に下がるわけです。

このように、資産の組み換えをうまくつかえば節税ができます。

また、不動産は分割して相続しづらいので、相続人の数に合わせて不公平感のない不動産に組み替えておくことで、相続人が話し合いで揉めることを防げます。

小規模宅地等の特例や贈与税の配偶者控除の特例を使う

居住用の物件や、お店をしている建物などは80%引き、50%引きの評価額で相続することができる、という小規模宅地等の特例という制度があります。

同様に、結婚してから20年以上経っていて、なおかつ相手がきちんと所有し居住することが条件ではありますが、2000万円までなら住むための不動産や不動産を用意するための贈与をしても贈与税がかかりませんよ、という贈与税の配偶者控除の特例があります。

こういった制度を利用することで、自宅の評価額を下げつつ相続させたり、二世帯住宅を立てて相続させたり、今の家から新しい家に住み替えると同時に贈与して控除を使ったりできるので、大幅な節税も可能なのです。

不動産がたくさんある場合、節税対策は大規模で時間のかかるものになりがちです。

生前からしっかりと相続を見越して専門家と話し合い、準備をしておくことこそが、なによりの相続財産になるのです。