効果的な生前対策でスムーズな遺産分割を

生前対策はひとつじゃない!

「相続でごちゃごちゃ揉めるくらいなら、最初から対策をしておいてやる!」

というのも、相続における被相続人の義務ではないでしょうか。

遺産はもともと故人の持ち物です。

自分の持ち物を誰にどう相続させるかで揉めるくらいなら、いっそ揉める余地がないくらいバッチリと生前対策をしておいたほうが良いとは思いませんか?

実際に相続で争っている人たちも、争うのが好きなわけではありません。

できるなら、スムーズに遺産分割ができたほうが良いに越したことはないのです。

「相続トラブルを回避する手段、生前の対策がカギ」では遺言や生前の話し合いという対策を紹介しましたが、じつは生前対策はひとつきりではありません。

今回は、他にもある効果的な対策を紹介していきます。

遺産をあげたい人には生前贈与

「どうしても自分の遺産を残したい相手がいる」

という場合、有効なのは遺産相続を待たずに生前に贈与してしまう、という方法です。

例えば、一年間で110万円までの贈与であれば、贈与税をかけずに資産を相手に譲ることができます。

贈与にもさまざまなルールがありますし、生前贈与のやり方によっては相手に相続税を負担させることにもなりかねませんが、少なくとも前もって渡しておけば、「1円も相続されない・・・」なんて事態は避けられます。

遺言は故人の遺志を理解してもらい、相続のルールを決める強力な武器ですが、遺留分の請求など自由にならない部分も持っています。

より確実に、どうしても遺産をあげたい人がいる場合、生前贈与を考えましょう。 

生命保険も効果的!

相続税の計算においては、死亡時に支払われる生命保険には「相続人1人あたり500万円」という非課税枠がついています。

生命保険に加入し、受取人を事前に指定しておけば、好きな相手に好きな金額を渡すことができるのです。

 生命保険の良いところは、確実に現金での支払いが行われることです。

家や土地、駐車場などの不動産をもらっても、現金でないし固定資産税もかかるし、困ってしまうなんて場合もあります。

現金なら好き勝手に分割できますし、生活費にあてたり、相続税の納税にあてたりするのも自由で、使い勝手が良いのです。

相続人に合わせて相続財産の整理をしよう

もし、ものすごく仲の悪い相続人がいる、という場合は、相続財産を整理しておくのもひとつの手です。

「揉めないように財産の整理をする」というのは、「相続人の人数に合わせて、不公平感のないように不動産を売ったり買ったりする」といいかえても構いません。

例えば、顔を合わせればケンカばかりで、生前協議なんてできそうにもないし、生前贈与をしておくとどちらかが文句をいうに決まっている。そんな兄弟2人が相続人だったとします。

あなたが不動産をたくさん持っている場合。

500万円の土地に、800万円のマンション。500万円の駐車場に300万円の空き地、と価値の違う不動産がいくつもあるならば、一旦すべて売却して、「2000万円の現金」や、「1000万円の不動産を2つ」になるよう遺産を整理しておけば良いのです。

「お互いに、公平に1000万円の不動産が相続される」のであれば、「この500万円の土地と800万円のマンションは自分のものだ!」「それじゃ不公平すぎる! 土地は全部くれ!」なんて争いにはなりません。

相続税の計算上、使用していない土地には相続税もたくさんかかってしまいます。

先のことを考えて、使い勝手の悪い土地は潰してしまい、現金にするなり資産の組み替えをするなりしておくことで、相続トラブルの芽を摘みつつ、節税もできるのです。

これらの対策は、亡くなってからはどうしようもできません。

普段から自分の遺産をどう扱うか、どう相続させるかを考えておくことが、なによりも大切です。