子供がいない夫婦にありがちな相続トラブル

子なし夫婦の相続問題とは?

「子供はいないけれど、夫婦仲良くやっている」

もし、あなたがこういったご家庭のどちらか一方なら、今すぐに相続対策をしておくのがおすすめです。

相続のさい、トラブルになるケースは無限にあります。しかし、「こんな状況のときは大抵トラブルになる」という定型的なパターンがあるのも事実です。

亡くなった方に子供がいない場合は、相続時に問題が起こりやすいパターンの代表的なものなのです。

例えば、こういったトラブルが考えられます。

ケース:子供がいない場合の相続トラブル

田中さんは子宝には恵まれなかったものの、優しい旦那さんと柴犬のタロウと仲睦まじく暮らしていました。

子供ができなかったことで旦那さんの両親から散々にいじめられ、旦那さんは激怒。ただ一人の弟とも仲はあまり良くなく、事実上旦那さん側の家族とは縁切りをして、この10年の間に旦那さん側の両親も亡くなってしまっています。

そんなある日、旦那さんは交通事故に遭って亡くなってしまいました。失意のなか田中さんが持っていた6000万円の家と現金3000万円を相続しようとしたところ、不仲だった旦那さんの姉が葬儀の場にやってきて、こういうのです。

「兄さんの遺産は、弟である自分にも相続する権利はある。そうだな、現金は全部俺にくれ!」

田中さんは、どうすれば良いのでしょうか?

子供がいないと兄弟姉妹や親も相続人になる!

田中さんのご主人が亡くなったのは、想定外のことでした。

なので、遺言等が残っておらず、民法の規程と両者の話し合いで相続を行うことになります。

ここで問題となるのは、「この10年連絡もしておらず、仲も悪く、一緒に暮らしてもいない兄弟に相続権はあるのか?」ですよね。

答えは、「義弟さんは一定の相続権を持っている」となります。

法律では、相続順位というものが決められています。

子供がいない場合は亡くなった人の親が、子供がおらず親もいない場合は、亡くなった人の兄弟姉妹が相続する権利を受け継ぎます。

法定相続分は、親は3分の1、兄弟は4分の1。

つまり、今回のケースであれば、田中さんの義弟さんは遺産総額の4分の1である2250万円を相続する権利を持っているのです。

実際にいくら渡せば良いの?

法定相続分に従って話を進めれば、田中さんはご主人の遺産、総額9000万円の4分の1を義弟さんに渡さなくてはなりません。

ただ、話し合いの結果相手が引いてくれるのであれば、田中さんが9000万円の遺産を全て相続することも、可能です。

とはいえ、相手は最初から遺産の3分の1である現金3000万円を請求してきています。話し合いがうまく行く可能性は、低いといえるでしょう。

徹底的に話し合い、裁判までやる、というのも選択肢の一つですが、旦那さんをなくしたばかりの田中さんに、お金と時間と気力と体力を消耗する裁判を戦い抜くことはできるでしょうか?

このケースだと、「あなたの法定相続分は2250万円だから、それで我慢してください。もっとくれというのなら、裁判でもなんでもお好きにどうぞ」というのが一番楽な選択になるでしょう。

手元に残る現金は、750万円です。

田中さんがトラブルを避け、9000万円を全て相続するためには、ご主人の遺言書が必要だったのです。

子供がいない場合は遺言書を書いておこう!

遺言の内容は、法定相続分に優先します。

田中さんのご主人が、万が一のために「なにかあったら遺産は全部妻に譲る」と一筆したためておけば、義弟さんがなにをいってこようとトラブルにはなりませんでした。

遺言書を残すというのは、相続トラブルの解決においてとても効果的な手段なのです。

一点注意が必要なのは、「遺留分」の存在です。

子供がいない場合、次点の相続順位を得るのは亡くなった人の親です。親の法定相続分は遺産総額の3分の1であり、親には「最低限この割合は相続できる」という遺留分の請求が認められています。

もし、相続の主張をしてきたのがご主人の親だったなら、3000万円の現金は確実に相手に渡さなければなりませんでした。

遺留分は、たとえ遺言の内容がどうなっていようと保証される権利です。

話し合いで全てを田中さんが相続することを承諾してもらっていれば良いのですが、そうでない場合は、また別の争いになってしまいます。

兄弟姉妹には遺留分は発生しないので、今回のケースであれば遺言書を用意しておくだけでトラブルを未然に防げます。

子供がいない場合、奥さんや旦那さんに遺産の全てを残すのは難しいので、事前に対策をしておきましょう。