内縁関係のパートナーには、遺産を残せない!?
「内縁関係のパートナーは、相続人としての権利を持っていない」
って、あなたはご存知でしたか?
日本では入籍をし、婚姻関係をきちんと結んでパートナーになるのが一般的ですよね。
一方でフランスなどでは事実婚といって、いわゆる法的な入籍を行わず、好きな人と一緒に生活する、というスタイルが多く取られています。
それにならうわけではありませんが、いろいろ事情があって、もしくはなんとなく「籍は入れなくても良いんじゃないか」なんて関係を結んでいる方もいるのです。
日常生活のうえで、内縁関係であることはデメリットにはなりません。ただ、法律や役所のシステムの関係上、内縁関係であることにはいくつかデメリットがあります。
そのひとつが、相続時の問題です。
相続人になることができる条件は、基本的に故人と血縁関係があることが基準になっています。
故人の配偶者、子供、孫、親兄弟といった存在のみ法定相続人として認められているわけです。
血筋としてはつながっていても、故人のいとこやおじ、おばには相続の権利はありません。内縁関係である以上、書類のうえでは他人同士なわけですから、しっかりと対策をしておかないと、あなたの大切なパートナーに遺産を残すことができないのです。
では、実際にどのようなケースで相続問題が起こってしまうのか、見てみましょう。
ケース;内縁の夫の遺産を受け継げない・・・
真弓さんは、25年間ずっと夫の賢治さんと生活しています。
籍を入れていないのは、子供もおらず、お互いに収入もあるので入籍しなくても良いとお互い考えているためです。
このところ夫である賢治さんの体調が思わしくないので病院に行ったところ、なんとがんで余命半年という診断が下されてしまいます。突然のことに慌てる真弓さんでしたが、慌てて長期入院の準備を整え、介護に励みました。
ただ、真弓さんの健闘もむなしく賢治さんは半年後に他界。賢治さんの遺産を相続しなくてはなりません。
遺産とはいっても、賢治さんが遺しているのは2人が住んでいた一軒家と、銀行口座にあった預貯金が少しだけ。
「自分にも蓄えはあるし、あとは家にこもって少しずつ遺品の整理をしよう」そう思っていたら、賢治さんのご両親が訪ねてきて、遺産相続に名乗りを上げてきました。
賢治さんの遺産は、内縁とはいえ連れ添ってきた私が相続する。そう考えていた真弓さんは、ものすごくびっくりしてしまいました。
さて、真弓さんはどうなってしまうのでしょうか?
入籍をしていないパートナーに遺産を残すためには
内縁関係というのは、民法の規定上法定相続人とは認められていません。つまり、赤の他人なので何十年連れ添っていようと、近所ではおしどり夫婦で有名だろうと、真弓さんは賢治さんの財産を相続することはできないのです。
ここから、真弓さんができることは3つあります。
- 賢治さんのご両親から遺贈してもらう
- 賢治さんのご両親から相続財産を贈与してもらう
- 不動産に関しては、真弓さんが賢治さんのご両親から買い取る
以上の3つです。
①賢治さんのご両親から遺贈してもらう
賢治さんの所有財産を相続することができるのは、遺言がない以上賢治さんのご両親、そしてその次が賢治さんのきょうだいとなります。
少し時間はかかってしまいますが、最も金銭的なデメリットがない方法が、「賢治さんの遺産を相続したご両親に遺言を残してもらい、賢治さんが持っていた財産を真弓さんに遺贈してもらう」という方法です。
相続税がかかってしまう可能性はありますが、負担としては少ないです。
賢治さんのご両親と話がつけば、名義はご両親のもので、そこで生活するのは真弓さん、というスタイルを取っても良いでしょう。
ただ、遺贈となると賢治さんのきょうだいがいた場合、揉めてしまう可能性があります。
②賢治さんのご両親から相続財産を贈与してもらう
一旦ご両親に遺産相続をしてもらい、そのあとご両親から真弓さんへ贈与してもらう、という方法です。
ただ、一般的に贈与税は相続税よりも高いですし、手続きも必要なので大変です。
③不動産に関しては、真弓さんが賢治さんのご両親から買い取る
預貯金を買い取ることはできませんが、賢治さんの名義だった家を真弓さんがご両親から買い取る、というのもひとつの手です。
個人間の取引では消費税はかかりませんし、真弓さんが買い取ってしまえばもう自分のもの。相続について悩む必要もありません。
ただ、お金はかかります。
内縁関係のパートナーがいるときは、遺言書を書こう!
3つの対抗手段は、あくまでも「賢治さんが遺言を残していなかった場合」に使えるものです。
相続トラブルを避けることを考えると、賢治さんに「財産の一切を内縁の妻・真弓に遺贈する」と一筆書いてもらっておくのが一番の方法です。
内縁関係のパートナーにきちんと自分の財産を渡すため、受け取るためには、最低限遺言があったほうが良いと覚えておきましょう。
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