「一つのものを共有する」のはトラブルのもと!
あなたは、恋人を別の誰かとシェアすることができますか?
日本は一夫一妻制ですし、慣習的にも同時に複数の人とお付き合いをするのは余り褒められたことではありませんよね。
「とってもかわいい恋人のAちゃん! 彼女はかなりモテるから、ぼくは月曜日担当の恋人なんだ!」なんていう人は、まずいません。
人間を分割することはできないので、Aちゃんの上半身と下半身でわけて2人の恋人でシェアをする。一週間毎日別の人と付き合う、なんてのはとても無理な相談なわけです。
誕生日のホールケーキは複数人で分割してシェアすることもできますが、恋人のように世の中にはシェアするには不適当なものが存在します。
相続財産における、「不動産」もその一つです。
共有すれば、売買や改装、利用にも全員分の同意が必要なので大変!
故人の財産を相続するにあたって、不動産の取り扱いに頭を悩ませる人は多いです。3階建てのマンションを、真っ二つに割って2人でシェアすることは不可能ですが、「2人の共有物」として名義人を複数登録することは可能だからです。
本来分割できないものを無理に分割すると、どうしてもトラブルになってしまう可能性が高い、ということですね。
例えば、3階建てのアパートがあったとします。
これを故人の子供3人で相続し、同じ割合で共有しています。建物はそろそろ老朽化してきているので、大規模な改修を行うか、アパートを潰して駐車場にするか、今後のことを決めなければなりません。
もし、アパートをどうするかの意見がきょうだい間でそれぞれ違った場合、誰も不動産に手出しができません。名義が共有されている以上、全員分の実印と承諾がないと、不動産をどうこうすることはできないからです。
もし、きょうだいの内1人が海外に移住してしまったら、連絡を取ることすら大変になってしまいます。
実は、「共有している相続人と意見が合わない、連絡が取れない」ために放置せざるを得ない不動産というのも少なくはないのです。
いつまでもトラブルなく共有するのは難しい
不動産がたくさんある、相続人全員に同程度の価値を持つ不動産を用意することができる資産を持っている人は、決して多くはありません。
大抵の場合、商売をしている土地と建物が一つ二つあったり、自宅を持っていたり、親から相続した地方の土地を持っていたりするくらいのものです。
財テクや相続税対策に興味のない人にとって、不動産の名義をどうこうする、資産の組み替えをするなんて思いもよらない話ですよね。
それだけに、「持っている不動産は、公平になるように共有させれば良いじゃないか」と実行してしまうケースが多々あります。
しかし、親子であれ、きょうだいであれ、親戚であれ、それぞれ価値観は違います。相続した財産を自分の自由にできないストレスを抱えつつ、毎年固定資産税の支払いを求められるのが嫌だ、なんて場合もあり得ます。
名義を共有していつまでも仲良くやっていければ良いのですが、そうでなくなったときに起きるトラブルは実に複雑です。
家賃を節約して広い部屋に住めるルームシェアだって、親友同士ではじめてうまくいかないこともあります。恋人同士の同棲や、夫婦の同居もうまくいかないことだってあるのです。
「なにかを誰かと共有する」のは、とてもデリケートな対応です。
相続ではただでさえトラブルが起こりやすいので、トラブルになりがちな不動産の共有は、なるべく避けるのがベターな対処といえます。
不動産の所有は、一人に絞ろう
産を共有している人が亡くなると、その所有権をまた別の誰かに相続させることになります。
Aというアパートの所有権を3分の1持っている人が亡くなり、その人の相続人が2人いればどうなるでしょうか。公平にわけると、3分の1の所有権をさらに2人でわけるのです。
このように、不動産の共有は放っておくとどんどん複雑になるリスクも秘めています。
一番良いのは、「不動産の権利は相続人の一人に譲り渡すようにする」ことです。
遺言でも生前贈与でも構いませんので、きちんと誰に相続させるのか決めておけば、共有者が分散することもありません。
不動産が一つしかなく、相続人が複数いて公平に相続させられない、という場合は、「誰か一人に不動産を相続させ、公平な遺産分割になるよう相続した人が代償金をほかの相続人に払う」のがおすすめです。
不動産の取り扱いには、くれぐれも注意しましょう。
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