相続財産の評価額|故人が貸していた土地「賃宅地」について

土地を貸している場合の財産評価

「あちこちに不動産を持っていて、土地を貸している」

「アパートやマンションを持っていて、賃貸物件を運営している」

という方、結構いらっしゃるのではないでしょうか。

地主や大地主、不動産関係の方でなくとも、先祖代々の土地を放っておくのもなんだから、と他人に貸し付けて商売をしているという人もいるでしょう。

他人に貸している土地を持っていたり、自分の土地で賃貸物件の経営をしていたりする場合、じつは土地の財産評価がちょっと複雑になってしまうのです。

どうしてかというと、「土地の評価額はその土地をどのくらい自由に使えるか」で決まるからです。

土地を自由にできないぶん、貸宅地の評価額は安くなる

自分の土地を自分で利用する場合、100%自分のために土地を活用できますよね。

駐車場を作るのも、放っておくのも、なにかしらの建物を建てるのも誰にはばかることなく自由にできます。

ですが、その土地を誰かに貸していたり、賃貸用のマンションを建てていたりすると、貸した相手がその土地に住んでいるわけですから、「明日からマンションを取り壊して自分の家を建てます!」なんて自由に振る舞うことができません。

土地を所有はしているものの、使用権はあなたにない状態なのです。

専門用語を使うと、「底地を持っているが、借地権のぶん土地を自由に利用できない」わけです。

土地の財産評価をするときは、路線価や固定資産税評価額を使って計算をします。

ですが、土地を誰かに貸していようと、自分のために持っていようと、土地が道路に何㎡接しているのかなんて変わりはありませんよね。

「自由に使えないのに、相続財産としての評価額が同じ!」なんてことになると、ちょっと不公平です。

そこで貸宅地の場合、借地権を抜いた残りの底地のぶんだけを評価の対象とします。言い換えれば、「土地を自由に使えないぶん、評価額を安くするよ」という計算を行うわけです。

「貸宅地」と「貸家建付地」の違いと評価の計算式

貸地は、

  • 貸宅地=土地だけ貸している場合
  • 貸家建付地=土地プラス賃貸マンションなどがある場合

にわけられます。

そして、それぞれの場合で評価額の計算方法が異なるのです。単純に土地を貸すときよりも、アパートやマンションをどーんと建ててしまったほうが土地利用の自由度が下がります。建物があるぶんを加味しなければなりません。

では、それぞれのケースを確認していきましょう。

貸宅地の評価額を計算するには?

土地の所有者ではあるけれど、他人に貸しているので土地を自由にできない。

そんなときは、土地全体の評価額から、土地を貸している相手の権利ぶんを差し引いた残りを求めます。

・自用地としての評価額×(1-借地権割合)=貸宅地の評価額

となるわけです。

貸家建付地の評価額を計算するには?

貸宅地で、さらに賃貸のマンション等を経営している場合、土地だけでなく建物部分についても考慮する必要があります。

計算式は、

  • 自用地としての評価額-自用地としての評価額×借地権割合×借家権割合

です。借地権割合も借家権割合も、国税庁のホームページから調べられます。

自用地としての評価額×{1-(借地権割合×借家権割合)}でも同様に計算できるので、好みの計算式を使うと良いでしょう。

貸宅地と貸家建付地の評価額を計算してみよう!

計算式だけではピンと来ないと思いますので、適当な数字を入れて計算してみましょう。

  • 自用地としての評価額が3500万円の土地
  • 借地権60%、借家権30%

という条件を使って、

  1. 土地だけの場合
  2. 土地に賃貸用のマンションが建っている場合

を考えます。

①土地だけの場合(貸宅地の評価額)

計算式はうえで紹介しているものを使います。計算してみると、

  • 自用地としての評価額×(1-借地権割合)=貸宅地の評価額
  • 3500万円×(1-0.6)=1400万円

自分で土地を持っているときより、2100万円も評価額が安くなりましたね。

②土地に賃貸用のマンションが建っている場合(貸家建付地の評価額)

貸家建付地はちょっと計算手順が増えますので、再度計算式をチェックしてみましょう。

  • 自用地としての評価額-自用地としての評価額×借地権割合×借家権割合
  • 3500万円-3500万円×0.6×0.3=2870万円

貸家建付地の場合も、土地を自分で所有しているときより評価額は安くなっていることがわかります。

土地の評価額は大きくなりがちなので、計算ミスや勘違いのないよう確実に評価額を出すのが重要です。

国税庁のホームページで路線価や借家権割合などは簡単に調べられるので、軽く調べて、ぜひ一度評価額を計算してみましょう!