要注意!相続税の立て替え納税には贈与税がかかることも!

ほかの相続人に「相続税を立て替えてもらう」と損をする!?

「土地や建物はいらないから、現金だけ欲しい」

「じゃあ、こちらが相続する金額のほうが大きくなるな。現金は全部やるから、ついでにお前のぶんも相続税を払っておくよ」

なんて話が、相続税を納税するとき実際に行われるケースがあります。

相続税の手続きは、基本的にどんな人にとっても面倒なものでしょう。できれば避けたいし、すぐに現金化できるもの、もっというと現金だけ受け取れれば、他の相続人が不動産などをどう扱おうと気にしない、という人もいると思います。

例えば、「両親と同居していて、家督を継いだ兄」と「家を出て別の場所で生活をしている弟、妹」などがそれに当たります。

手続き上は「兄が遺産の7割、弟が遺産の3割」という分配で遺産を相続していて、たくさん相続する相続人が、ほかの相続人の税金もまとめて払ってしまう。

相続税を立て替えてもらった側からすれば、納税の手続きも必要ないし、受け取った遺産をそのまま自分の手元に置いておけるし、とても便利に感じます。

立て替える側も、これで相続税に関する手続きに一区切りがついた、とほっとしますよね。

ですがこういった納税の立て替えを行うと、通常かかる相続税とは別に、「贈与税」が余計にかかってしまうのです。 

立て替え納税をすると贈与税を納めなければならない!

「ほかの人の相続税を立て替えて納税すると、贈与税がかかる」とは一体どういうことなのでしょうか?

お金、遺産の流れを考えてみましょう。

相続税は、「財産資産が亡くなった人(被相続人)から相続人へと移動する」ことで発生する税金ですよね。

相続人がABCの3人いるとすると、相続をしてから納税するまでのお金の流れは、

被相続人→相続人A(遺産の6割)→遺産の6割に対する相続税を納税

被相続人→相続人B(遺産の2割)→遺産の2割に対する相続税を納税

被相続人→相続人C(遺産の2割)→遺産の2割に対する相続税を納税

といった感じになっています。

相続した遺産の金額で相続税額は決まり、ABCそれぞれの相続人が自分で自分の相続税を税務署に支払っているので、どこにも問題はありません。

ここで、相続人Aが相続人Bの相続税を、立て替えてあげるとどうなるでしょうか?

被相続人→相続人A(遺産の6割)→遺産の(6+2)割に対する相続税を納税

被相続人→相続人B(遺産の2割)→自分では相続税の納税をしない

被相続人→相続人C(遺産の2割)→遺産の2割に対する相続税を納税

お金の流れを見てみると、ひとまずCは立て替え納税をするまえと変わらず、問題ありません。

Aは、自分のぶんと、Bのぶんを一緒に納税しています。相続税を支払っているので、これも問題ありません。

では、相続人Bに注目してみましょう。

良く見ると、Bは税金を納めていませんよね。

「Bが相続したお金のなかから相続税額ぶんをAに渡し、納税してもらった」というより、「Aが遺産の8割を相続し、遺産の8割に対する相続税を納税して、Bに遺産の2割ぶんお金を渡した」と見えるのではないでしょうか。

つまり、相続人AからBに対して、遺産2割ぶんの「贈与」があったとみなされるのです。

贈与に対しては、当然贈与税がかかります。贈与税には「年間110万円までの贈与なら非課税」という基礎控除がありますから、Bが相続している「遺産の2割が110万円の非課税枠」を超えていれば、そのぶん贈与税を納税しなくてはならないのです。

面倒でも、自分の相続税は自分で納めるのが一番

立て替え納税をして、贈与税の非課税枠以上の贈与があったとみなされた場合、「相続税に加えて贈与税も」納税しなくてはなりません。

贈与税が余分にかかれば、「遺産全体に対する税金の総額」が増えてしまいます。

税金を納めると、当然相続人の手元に残るお金は減ってしまうわけですから、自分が相続したものに対する相続税は、自分で納めるのが一番良いのです。

厳密には節税というよりも、余分に税金を増やさないための知識ですね。

立て替え納税をせず、納税額ぶん相続額を増やせば節税に

大抵の場合、立て替え納税を了解するときは、「現金を渡すから遺産の2割で納得して欲しい」「遺産の2割で良いから、そのぶん相続税の支払いはお願いね」といった話をしていることでしょう。

自分で自分の相続税を納めるのが良いとわかった以上、お互いが納得する形で遺産相続について話し合う必要があります。

おすすめしたいのは、「納めなくてはならない相続税の金額ぶん、相続額を増やしてもらう」ことです。

例えば、「現金1000万円をもらう」という条件なら、通常100万円の相続税がかかります。

1000万円相続しても、100万円納税すれば手元に残るのは900万円です。最初から1100万円を相続していれば、相続税110万円を支払っても、手元には1000万円が残りますよね。

こういった話し合いをして、贈与税を納めなくても良いように相続を行いましょう。