相続が始まってからできる、節税対策の運用事例(鈴木さん一家の場合)
「実家に駐車場、思い入れのある土地、賃貸マンション。どれも手放したくないけれど、相続税を支払えるだけの現金がない!」
そんなとき効果的なのが、「相続税の延納」です。
延納とは、
- 延滞税や利子税に相当する担保を提出することで
- 最長で20年に分割して相続税を納税できる
という制度です。
延納には、「分割払いになることで利子税を余分に納めなければならない」というデメリットがあるものの、「不動産を売らなくて良い」というメリットもあります。
今回は延納して不動産を残すこと、残した不動産を有効活用することで、大幅な節税を実現する鈴木さん一家の例をご紹介します。
どうしても土地を売りたくない鈴木さん一家
鈴木さんのお父さんが亡くなり、総額2億円の遺産相続が発生しました。
相続人は一人息子の鈴木さんと、鈴木さんのお母さんの2人のみ。
財産の内訳は、1500万円の実家と2500万円の賃貸アパートが1棟、残りの1億6000万円はすべて土地です。
現金はほとんど残っていないので、2億円の遺産に対する相続税を一括で支払うなんて夢のまた夢の話。
鈴木さんが弁護士に相談したところ、「土地を売却して現金を作っては?」といわれてしまいました。
別の税理士に相談してみると、「延納を使ってできるだけ不動産を手元に残し、今後の生活にも備えましょう!」といわれたので、節税と延納に取り組んでいきます。
土地の整理をして評価額を下げよう
遺産の8割を占めるのは、駐車場を含む土地です。
まずは持っている土地の「不便なところ」、つまり評価額を下げられるポイントを探してみました。
すると、
◎がけ地になっている
◎奥行きがあって使いづらい
◎郊外の土地で利便性が良くない
◎大通りに面しておらず、細い路地からしか出入りできない
◎デッドスペースがある
◎セットバックが必要
などなど、「土地を利用するにあたって不便なところ」が見つかりました。
それぞれの土地の評価額を計算しなおすと、
- 評価額1億円の土地→評価額7000万円に減額!
なんと、評価額3000万円ぶんの節税に成功しました。
小規模宅地等の特例と、配偶者の税額の軽減(配偶者控除)も使う
実家は鈴木さんのお母さんが引き続き住むので、「小規模宅地等の特例」を利用します。
- 評価額1500万円の実家→8割引き→評価額300万円に減額!
また、鈴木さんのお母さんは「配偶者の税額の軽減」を利用できます。
この時点で、土地の再評価と小規模宅地等の特例によって遺産総額は1億5800万円になっています。
鈴木さんと鈴木さんのお母さんが財産をちょうど半分ずつ相続するように調整した結果、お母さんが相続する7900万円ぶんは、相続税がゼロになりました。
では、節税対策の効果を見てみましょう。
○節税対策をするまえ
2億円の遺産に対して、3340万円の相続税
○節税対策をしたあと
1億5800万円の遺産に対して、1040万円の相続税
不動産をすべて手元に残しつつ、2300万円もの節税に成功です。
不動産を担保にして延納の要件を満たす
鈴木さん一家が延納をするためには、「利子税などに相当する担保」が必要です。
たくさんある土地のなかに、あまり契約者のいない駐車場があったので、これを担保にして延納の申請を行うことにします。
延納の手続きまでしてしまえば、今後、利子税を払いながら相続税を分割で納めていくだけです。
ここからさらに、残っている不動産の有効活用まで考えると、さらに節税の効果がアップします。
不動産を活用して、相続税の支払い原資と今後の生活資金を作ろう
鈴木さん一家の相続財産には、賃貸アパートが1棟ありましたよね。
アパートの家賃収入は、今後の利子税の支払いにあてられます。
ではここから、延納原資と生活していくためのお金を作るために、空き地に賃貸物件を建ててみるとどうなるでしょうか。
賃貸物件を建てると、土地と建物の評価額は下がります。つまり、次回の相続では、家賃収入のある賃貸物件をより安く相続可能になるのです。
不動産を売らずに残し、有効活用することで、将来のために節税もしつつ、現金収入の手段を増やして、相続税の支払い方法まで手に入れることができるというわけです。
不動産を売却して現金を作ってしまうのは楽ですが、作った現金で相続税を支払うことで、その先の生活が苦しくなっては意味がありません。
どうしても不動産を手放したくない場合、延納プラス手元に残した不動産の有効活用の合わせ技で、大きな節税を目指してみるのもおすすめです。
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