相続税ケーススタディ|他の相続人の同意が不要な更正の請求

相続が始まってからできる、節税対策の運用事例(高橋さん一家の場合)

「相続税をたくさん払ってしまっている」

「相続の手続きは家族が取り仕切っていたが、どうもきちんと節税しているのか不安だ」

「節税を知らなかったために相続税を多く納めてしまった。どうにかできないかな?」

相続税の申告期限は、故人が亡くなってから10ヶ月と決まっています。

10ヶ月以内に遺産分割の話し合いを終え、分割を行い、相続税の申告と納税をしなくてはなりません。

ただ、いろいろと事情があって節税がうまくできなかった。納得のいく申告ができなかった、なんてケースもありますよね。

今回は申告後にできる節税の方法として、更正の請求によって払い過ぎた相続税を取り戻した高橋さん一家の事例を紹介します。

兄弟仲が悪く、相続税の申告内容に不服があった高橋さん

高橋さん一家のお父さんは、田舎の田んぼや畑、山など、不動産を多く持っていました。

総額でいうと、およそ3億円もの遺産があったのです。

お父さんが亡くなり、遺産は家族で相続することになりました。相続人は、長男の高橋さんをはじめとした、次男、長女の3人です。

遺言書は残っていなかったので、遺産は遺産分割協議によって分け合います。

ただ、高橋さんと次男は昔から仲が悪く、次男は「長男に多く相続されてなるものか!」と長女を説得し、ほとんど高橋さんを無視するような形で遺産分割協議と申告の手続きを進めてしまいました。

結果として、法定相続ぶん通りではあるものの、高橋さんは田舎の実家と、広いだけでどう使おうか迷う土地、合計1億円を相続することに。

せめて、節税をしてきちんと親の財産を残したい。そう考えていた高橋さんだったので、自分をのけものにするような兄弟のやり方には不満を感じています。

もしかしたら相続税の節税対策をほとんどしていないのでは? と不安になり、改めて自分で相続の見直しをすることを決めました。

更正の請求をするために、節税可能かどうかを調べてみよう

更正の請求をするためには、

  • 申告期限から5年以内であること
  • 相続人の増減などを知ってから2ヶ月または4か月以内であること
  • 前回の申告が間違いであり、新たに確実な申告を行うという証明書類を用意すること

といった条件をクリアする必要があります。

ただし、そもそもの話、更正の請求をしたら税金が戻ってくるくらい、節税できる余地があるのか? を調べなくてはなりません。

更正の請求を行うためには、「税金を払いすぎている根拠」が必要なのです。

高橋さんが税理士に相談し、専門家を呼んで調査してもらったところ、相続した土地は800㎡もありました。500㎡以上ある土地なら、広大地として認められる可能性は高いです。

実際、用途としても十分「広大地」として認められるだろう、と専門家から太鼓判を押してもらいました。

申告の書類を確認したところ、土地の評価額は8000万円として計算されています。

この土地を広大地評価すると、

  • 8000万円の土地→評価額は4480万円に減額

と大きく減額できることになります。

高橋さんは必要書類を集め、更正の請求に踏み切りました。

更正の請求は、ほかの相続人の同意がなくても可能!

更正の請求をするさい、自分以外の相続人の同意を得て同時に手続きを行う必要はありません。

「あ、相続税を払いすぎているぞ」「なんだ、じつは節税できるじゃないか」とわかった時点で、自分のぶんだけ更正の請求をして、税金の還付を受けて良いのです。

高橋さんの場合、最初の申告では相続税を「1820万円」納税していました。

相続した土地を広大地評価して更正の請求を行った結果、納めるべき相続税額は「1504万円」ということになります。

つまり、差額の316万円を「払い過ぎた相続税」として取り戻せるのです。

300万円は決して少なくない金額ですよね。更正の請求ができるのにしない、というのはあまりにももったいないのです。

もしも申告内容に不満があったり、遺産分割協議が長引いたりするなら、税理士等に相談して更正の請求をすることができないか考えてみましょう。