二次相続に備えて、母親が相続しないことで節税した中村さん一家
二次相続ということばをご存知ですか?
両親と子供1人の家庭があったとしましょう。
この家庭で父親が亡くなると、父親の財産は配偶者である奥さんと、子供が相続することになります。これが一次相続です。
数年経って、今度は母親が亡くなってしまいました。
すると、母親から子供へと遺産相続が行われます。これが二次相続です。
二次相続では、「母が相続した父の財産+母自身の財産」を子供が相続することになります。
遺産総額が膨らむぶん、よりたくさん相続税を納めることになってしまいます。つまり、一次相続だけを考えて節税をしていても、二次相続でがっぽり相続税を取られてしまうと損をしてしまうわけです。
「両親共に多額の財産を持っている」
「二次相続まで考えて節税したいけどどうしたら?」
今回は、こんな疑問を解消するため、「二次相続に備えて、母親が相続しないこと」を選択した中村さんという一家の具体例を見ていきます。
中村さん一家の相続環境
中村さんのお父さんが亡くなって、家族で相続をすることになりました。相続人は、中村さんのお母さん(配偶者)、そして中村さん(子供)の2人です。
お父さんは農業をしていて、総額で5億円もの財産を残しています。財産の内訳は80%が土地で、現金は10%ほど。残りは家です。このままだとかなりの税金がかかってしまうのは間違いありません。
どうやって節税をすれば良いか悩んだ中村さんが税理士に相談をしたところ、ふとこんなことを聞かれました。
「中村さんのお母さんは、どのくらいの財産をお持ちですか?」
じつは、中村さんのお母さんは昔中村さんのおじいさんの介護をしていた関係で、資産家だった祖父の遺産を3億円ぶん遺贈されていたのです。
税理士によると、このまま法定相続分通りお母さんが相続をしてしまうと、将来的に二次相続で多額の相続税がかかってしまうとのこと。
中村さんは、より詳しく話を聞いてみることにしました。
「お母さんが相続をすると損をする」ことがわかるシミュレーション
中村さんの母親が法定相続分通り相続し、なおかつ配偶者が法定相続分以下の相続をするとき、非課税にできる「配偶者の税額軽減」を使って節税した場合、中村さんは、
- 7605万円の相続税
を納めなければなりません。
次に、将来的に中村さんのお母さんが亡くなった場合を考えてみましょう。
お母さん自身の遺産は3億円。さらに、お父さんの遺産2億5000万円を相続していますよね。
ということは、総額で5億5000万円ぶんの相続が発生するわけです。
中村さん1人ですべてを相続する場合、
- 2億1700万円の相続税
を納めるという事態になってしまいます。
長い目でみると、
- 両親の遺産8億円を相続するために、およそ3億円の相続税を支払う
という驚きの結果になってしまうのです。
父→母→子と二次相続をすると、結果的に多額の相続税がかかります。
説明を受けた中村さん一家は、「あえてお母さんは相続をしない」という選択をすることにしました。
中村さん1人ですべてを相続する代わりに、節税対策を取り入れる
中村さんは、お父さんの遺産をすべて自分で相続することにしました。
税理士に勧められた節税対策は、
- 自宅の相続は「小規模宅地等の特例」で減額
- 遺産の80%を占める土地は不動産評価で評価減を目指す
- 農地があるので、中村さんが農業を継ぎ、納税猶予を受ける
以上の3つです。
評価額5000万円の実家は、「小規模宅地等の特例」を使って2割まで評価額を圧縮します。
たくさんある土地を調べてみると、広大地評価できる土地や、がけ地になっている土地、無道路地などが見つかったので評価額を減額することに。
5億円の財産には、お父さんが農業をしていたので農地も当然含まれています。中村さんは農業を継ぐことを決め、農地部分の相続税に関しては納税猶予が使うことにしました。
結果をまとめてみると、
- 実家(5000万円)→1000万円に減額!
- 土地(3億8000万円ぶん)→2億3000万円に減額!
- 農地→納税猶予制度を活用!(猶予できる内は納税しなくて良い)
となります。
これだけではどのくらい節税できているかわからないので、納税額を計算してみましょう。
遺産総額は3億1000万円なので、相続税額は7320万円(農地部分の相続税は猶予されるので、実際の納税額はもっと少なくなる)となります。
なんの節税もしなかった場合の納税額は1億5210万円ですから、8000万円くらい節税できているわけです。
なお、この先中村さんのお母さんが亡くなり、相続が発生したとすると、お母さん→中村さんの相続に必要な納税額は、9180万円。両親の遺産総額8億円相当を相続するために必要な相続税の合計額は、1億6500万円です。
もし、一次相続のことだけを考えてお母さんに相続をしてもらい、配偶者の税額軽減を使っていたら、
- 父→子への相続税額は3660万円
- 母→子への相続税額は1億6750万円
約2億円の相続税が必要でした。
二次相続のことまで考慮して節税対策を取捨選択することで、中村さん一家は大幅な節税に成功できたのです。
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