節税ケーススタディ|売れる貸地は「建売用地」で安く手放す

たくさんある土地を売ることで、大幅な評価減と節税をした泉田さん一家

土地がたくさんある場合、詳しく調査をして評価減を狙うより、売ってしまったほうが節税できるケースがあります。

実際問題として、多くの土地があっても使わない、資産をもっとコンパクトにまとめたい、なんて方もいますよね。

不動産には使い勝手の良し悪しがありますし、なにより持っているだけで毎年固定資産税がかかりますから、当然です。

今回は、貸地を建売用地として売却することで節税に成功した、泉田さん一家の事例をご紹介します。

泉田さん一家の相続環境

泉田さんの家は、先祖代々の土地を大事に守ってきました。ただ、土地を持っていることを重要視していたため、現金はほとんどありません。なので、泉田さんのお父さんが残した遺産4億円のうち、9割が土地という状況です。

古くから持っているというだけの土地なので、貸地にしても収入は悪く、駐車場も空きばかりで、家族はなんとか不要な土地は処分してしまいたい、と考えています。

お父さんの遺産を相続するのは、長男である泉田さんと泉田さんのお母さん、県外に住んでいる姉の3人です。

財産のほとんどが不動産なので、相続税の支払いも難しい。試しに相続税の計算をしてみたところ、このままだと「9220万円」納税しなければならないことがわかりました。

そこで、泉田さん一家は大量のある土地をなんとかするために、まずは土地の調査をして評価額の減額を狙いつつ、土地の売却も考えることにしたのです。

現地調査で減額しても、使い勝手の悪い貸地は売るほうが得

泉田さんが真っ先に取り組んだのは、「たくさんある土地を徹底的に現地調査して、評価額を減額してしまう」という方法です。

専門家を呼んで手持ちの不動産をチェックしてもらったところ、広い貸地のほとんどは境界線もきちんと区切られておらず、利用の仕方も適当だったので、不整形地評価などで減額できました。

調査の結果、

  • 評価額3000万円の自宅を「小規模宅地等の特例」で600万円に評価減
  • 8000万円の貸し地を不整形地として評価して、6000万円に評価減
  • 1億6200万円の駐車場を広大地評価できたので、9720万円に減額

することができました。

課税される遺産の総額は、4億円から2億9120万円まで減額に成功です。

ただ、相続税の納税には現金が必要です。

広大地評価や不整形地などで判断できなかった土地8800万円ぶんを売却して、納税資金をつくります。

売れる貸地を「建売用地」として手放すことで、不動産評価額の減額に成功!

泉田さんは、8800万円ぶんの貸地を手放すことにしました。ですが、一つ一つの土地は小さなものですし、個別に売るのはものすごく大変です。

土地を売りに出しても、誰かが買ってくれなければ売買は成り立ちません。

そこで、まとめられる土地はまとめて、不動産業者に売ることにします。

貸地を「建売用地」として売ったのです。

不動産業者は買い取った土地を使って商売をします。大きなマンションを建てるためには、当然広い土地が必要です。

建売用地としてなら、広い面積の土地や、立て直しが難しい建物がある土地でもまとめて買い取ってもらえる可能性が高いというわけです。

個人に比べて資金力も豊富なので、話はスムーズに進みました。

しかも、不動産業者は「土地を安く手に入れて高く売りたい」と考えています。普通だったら土地は高く売れたほうがうれしいですよね。

ですが、相続税を節税したいときは話が別です。どういうことかというと、「妥当な理由で土地を安く手放すことができれば、土地の売却額で時価申告できるから」です。

8800万円ぶんの土地は、無事申告期限までに買い取ってもらえました。売却額の合計は、7500万円です。

つまり、土地の売却をしたことで、

  • 現金7500万円を手に入れ
  • 評価額を8800万円から7500万円に減額

できたというわけです。

さらに、相続人の1人である泉田さんのお母さんは、配偶者なので「配偶者の税額軽減」がつかえます。

もろもろの計算をしてみると、泉田さん一家は、

  • 節税をするまえ

遺産総額4億円

相続税額9920万円

  • 節税をしたあと

遺産総額2億7820万円

相続税額2053万円

なんと、7000万円以上の節税に成功するのです。

不要な土地を売ったお金があるので、相続税の納税も心配ありませんし、不動産が減ったことで来年の固定資産税も少し安くなります。

「財産を安く売ると儲かる」なんて一見すると不思議なことが起きるのも、節税ならではの面白さです。