「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の贈与税額を計算してみた!

贈与税の計算をするまえに知っておきたい、課税方法2つの違い

「贈与税って相続税よりたくさん税金がかかるって聞いたんだけど、本当?」

残念なことに、本当です。

節税を考えるにあたって、「贈与をつかうとお得になる!」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。

実際、このサイト内でもお得に贈与する方法をいくつもご紹介しています。

じつはこの贈与税という制度、「相続するときまで財産を残しておくのではなくて、生前にまとめて贈与しておけば相続税がかからないんじゃない?」という相続税の税金逃れに対する措置として用意されています。

そんな贈与税、実際何万円贈与したら、何万円の贈与税がかかるのか。興味はありませんか?

贈与税額の計算をするうえで、知っておいて欲しいのが課税方法の違いです。

贈与税の課税方法、簡単にいうと「贈与の仕方」は2種類あります。

  • 暦年贈与
  • 相続時精算課税制度

の2つです。

それぞれの方法は、控除の金額や贈与税の税率がまったく違うので、内容を確認していきましょう。

暦年贈与

暦年贈与は、

  • 年間、1人あたり110万円の控除がある
  • 控除の範囲内であれば贈与税はかからない(110万円以上の贈与だと税金がかかる)
  • 税率は、贈与額によって「10%から55%」

という贈与です。

なんといっても、一人あたり、年間110万円までの贈与なら税金がかからないというのが目玉です。

110万円の贈与を毎年繰り返せば、多額のお金を非課税で贈与させられます。とても手軽で、時間がかかるものの節税効果も高いです。

相続時精算課税制度

暦年贈与では、年間110万円が非課税です。

ですが、資産がたくさんあったり、贈与を急いでいたりすると、まとめて大きな金額を贈与したいですよね。

そういうときに便利なのが、「相続時精算課税制度」です。

  • 合計2500万円まで非課税で贈与できる
  • 2500万円を越えた部分に、20%の贈与税がかかる
  • 相続をするとき、この制度で贈与した金額を遺産総額に含めて相続税を計算する(すでに納めている贈与税を、相続税額から差し引きする)
  • 相続時精算課税制度を利用すると、暦年贈与は使えない

というもの。

一旦利用を始めると、暦年贈与とは併用ができません。ただし、2500万円までならどばっと贈与できるのが強みです。

では、2つの課税方法がどのくらい違うのか、ちょっと比べてみましょう。

もしも3000万円を贈与するとしたら?贈与税の計算をやってみよう

「10年間で3000万円を贈与する」場合の、暦年贈与と相続時精算課税制度の税額計算をしてみます。

暦年贈与で3000万円贈与したときの税額

贈与税額の計算式は、

(一年間の贈与額-基礎控除110万円)×贈与税の税率-贈与額ごとの控除

です。

10年のうち、9年使って990万円非課税で贈与し、最後の1年で残りを贈与する場合、

3000万円-990万円=2010万円=10年目の贈与額

3000万円以上の贈与は、控除が250万円、税率が50%なので、

(2010万円-110万円)×50%-250=700万円

10年間で3000万円贈与して、贈与税が700万円かかる、という結果になりました。

なお、「毎年300万円ずつ贈与すると、贈与税の総額は185万円」になります。

贈与する金額によって税額が大きく上下するのも、暦年贈与の特徴です。

相続時精算課税制度で3000万円贈与したときの税額

相続時精算課税制度の税額計算式は、

2500万円を越えた贈与額×20%

です。

2年目に2000万円を贈与して、5年目に500万円を贈与。10年目に残りの500万円を贈与したとすると、

(3000万円-2500万円)×20%=100万円

という結果になります。

このあと、故人が亡くなって相続が始まると、

(遺産の金額+3000万円-相続税の基礎控除)×相続税率=相続税

という計算をして、

相続税額-100万円=最終的な相続税額

と、納めた贈与税を差し引いてから相続税を支払います。

10年間で3000万円を贈与して、贈与税が100万円、プラス相続税がかかる、となるわけです。もし2500万円までの贈与なら、相続税のみ考えれば良いことになります。

贈与税を抑えてお得に節税したい人は、どうやって贈与するか良く考えよう

同じ贈与なのに、暦年贈与か相続時精算課税制度かで結果がまったく違いますよね。

  • 納めるのは贈与税だけで良・く、上限額もないけれどたくさん贈与するには時間がかかる「暦年贈与」
  • 2500万円を越えた贈与税と相続税がかかるものの、短期間で一気に贈与できる「相続時精算課税制度」

どちらが優れているのか、あなたにとってより良い節税なのかを考えるためには、どうやって贈与していきたいか、という計画づくりが重要になってきます。

どちらの贈与にも良いところ、悪いところがあるので、贈与をつかって節税するときはしっかり計画を立ててから取り組みましょう。