相続や贈与で受け取った財産は、名義変更をしないと処分できない!
「あなたが相続や遺贈で手に入れた財産は、正確にはまだあなたのものではない」
って、ご存知でしたか?
現金なら「はい、10万円贈与します」「やった、10万円もらったぞ! 美味しいものでも食べに行こう」なんて簡単な話で済むので、名義なんて意識しませんよね。
ですが一部の財産に関しては、売却や処分、契約の解除をするために「受け取った財産の名義を変更する」という手続きをしなくてはなりません。
例えば、あなたのお父さんが自分の名前でつくった銀行口座があるとしましょう。
あなたが成人した日、お父さんから通帳を手渡され、こういわれました。
「大人になったお祝いだ。この口座に貯めたお金を贈与しよう」
さて、あなたは「通帳を持って銀行に行き、現金を引き出す」ことができるでしょうか?
答えは「できない」ですよね。
お父さんからあなたに通帳が渡された時点では、通帳にはお父さんの名前が書いてあるはずです。
銀行側は持ち主があなたに変わったという連絡を受けていないわけですから、「口座からお金を下ろすことができるのは、契約者であり口座の所有者であるお父さんだけ」なのです。
家族といえども別の人。きちんと手続きをして、まずは口座の所有者を変更してからでないと現金の引き出しはできません。
贈与を受けた段階では、文字通り「他人の財産をあなたが受け取っただけ」の状態です。受け取った財産の名義変更をすることで、はじめて名実共にあなた自身の財産にすることができます。
名義変更には「いついつまでに名義を変えないといけない」という決まりがないので、手続きも忘れてしまいがち。
そんなわけで、今回は「名義変更が必要な財産」を紹介していきます。
不動産の名義変更
不動産の所有者や場所、広さなどの情報は、「登記」という形で登録されています。
登記を管理しているのは、全国50箇所にある法務局(登記所)です。
登記を変更するためには、法務局に行って手続きする必要があります。
贈与の場合だと、申請書と合わせて「不動産を贈与する契約書」や「印鑑証明書」、「住民票」などを揃えてから名義変更を行います。
手続きは自分でしても良いですし、専門家に任せることもできます。
預貯金の名義変更
定期預金や預貯金の名義を変更するのは、じつは結構大変です。
そもそも、基本的に口座は他人に渡すものではなく、自分で利用するものだからです。
ただ、戸籍謄本など身分証明になる書類や、金融機関から求められる書類、手続きを行えば、自分で名義を変更できます。
相続財産として預貯金がある場合、故人が亡くなった時点で口座は凍結され、名義を変更するまでお金の出し入れはできなくなるということも、ついでに覚えておきましょう。
生命保険など、各種保険の名義変更
各保険会社の規程に従って、手続きを進めることで、生命保険などの名義人、つまり契約者を変更することができます。
なお、名義を変更しただけでは贈与税はかかりません。保険金が出てそれを受け取ったとき、自分で保険料を負担していない部分に対して贈与税なり相続税なりがかかります。
自動車の名義変更
不動産の所有者情報は法務局が管理しています。自動車の場合、車の持ち主情報は運輸支局(陸運支局や陸運局なんて呼び方もありますが、同じ組織です)が管理しています。
贈与で自動車を受け取った場合、管轄の事務所で名義の変更、移転登録を行います。
自動車の名義変更をせずに放っておくと、元の持ち主のところに税金の支払い通知が来てしまいます。トラブルになりやすいので、贈与を受けてからすぐに名義変更するのがおすすめです。
その他名義変更が必要な財産
「契約書を交わして利用しているサービス、権利」や「所有者の情報をしっかり登録する財産」の贈与を受けた場合、名義変更が必要です。携帯電話やゴルフクラブの会員権などですね。
また、贈与ではなく相続の場合、名義変更が必要な財産はもっと増えるので注意しましょう。
例えば、故人が支払っていた電気料金を含む公共料金の契約、住んでいた賃貸アパートの契約、固定電話の電話加入権などなどです。
贈与を受けた財産の名義変更は、財産の処分をするにしろしないにしろ、やっておいたほうが良い手続きです。
必要書類を集めるのが面倒だったり、手続きができる事務所などが遠くにあったりする場合、手続きの代行をお願いして楽をするのも一つの手です。
忘れないように手続きしましょう。
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