相続するかどうかは自分で決めても良い
人が亡くなり、遺産があると遺産相続が始まります。
ですが、
「父の借金も一緒に相続しなきゃいけないの?」
「ほかの兄弟や親に相続して欲しいので、遺産相続をしたくない」
「遺産分割協議で親族と揉めるくらいなら、遺産なんていらない!」
などなど、遺産相続をしたくない人だっていますよね。
そんなときは、「相続をしない」という選択肢を選ぶこともできるのです。
相続財産には、不動産や現金といった「プラスの財産」と、借金や債務といった「マイナスの財産」があります。
シンプルに「相続人は全員で遺産相続をする」ことになると、たくさん借金がある人は自動的に自分の子供や奥さんに借金を背負わせることになってしまうので、相続するかしないか自分たちで決められるようになっています。
相続をするか、するとしてもどのようにするかの方法は、
- 単純承認
- 限定承認
- 相続放棄
の3つにわけられます。
一つずつ確認していきましょう。
単純承認
「すべての遺産をそのまま相続する」のが単純承認です。
プラスの財産もマイナスの財産もすべてひっくるめて相続します。
一般的な相続=単純承認です。
単純承認をする場合、特別な手続きや時間制限は必要ありません。
限定承認
「プラスの財産だけを相続して、マイナスの財産をできるだけ返済してあとは放棄する」のが限定承認です。
良くあるのは、「借金があることはわかっているけれど、借金がいくらなのかはわからない」というときに限定承認をするパターンです。
「プラスの財産を相続して、そこから借金を返せるぶんだけ返済し、残った余りを皆でわける」ので、借金があったとしてもすべてを返済する必要がありません。
ちょっとわかりづらいので、単純承認と限定承認の違いを見てみましょう。
単純承認と限定承認の違い
喫茶店を営んでいる水野さんのお父さんが亡くなりました。
お店と預貯金、自宅を含めると総額1000万円ありますが、喫茶店の経営は厳しく、お父さんは800万円ほど借金をしています。
というケースで、単純承認をした場合と限定承認をした場合、それぞれを見てみます。
単純承認をすると、借金も含めてすべて相続します。
実家がやっていた喫茶店や実家、少しの預貯金を手元に残すと同時に、水野さんたちはこれから800万円の借金を返済していかなければなりません。
限定承認をすると、実家、喫茶店、預貯金をすべて相続して、そのなかからできる範囲で借金を返済します。
ただ、返済しきれない借金の残りは放棄することが可能です。
つまり水野さんは、「喫茶店と自宅を残しつつ、借金ゼロの状態からお店の立て直しに奔走できる」ようになるのです。
このように、どうしても相続したい財産があるとき、限定承認はとても有効です。
なお、限定承認をする場合、プラスの財産とマイナスの財産を隅々までチェックする必要があります。単純に手続きが難しく、より細かくなるので専門家を頼るのがおすすめです。
そして、限定承認をするには相続人全員の同意が必要です。話し合いをして、皆の意思で限定承認をするかどうか決めましょう。
相続放棄
「プラスの財産もマイナスの財産も、すべて相続しない」のが相続放棄です。
考え方としては、「最初から放棄をした相続人は存在しなかった」と考えて、相続や税金の計算を行うことになります。
たくさん借金があるときによくつかう方法ですが、単純になんとなく気に入らないから、面倒だからと相続放棄をすることも可能です。
「お父さんの相続財産は実家と少しの現金だけで、子供たちが相続をしてしまうと、お母さんが住んでいる家を売り払って相続税を納めなければならなくなる」
なんてケースでも使えます。
注意点は、「相続放棄をしたあと、別の人に相続の権利が移ることもある」ことです。
うえの例でいうと、子供たちが相続を放棄すると、お父さんの兄弟や両親に相続の権利が移ります。
彼ら彼女らを交えて遺産分割の話し合いや納税をする必要が生まれますが、「誰かが相続放棄したことで、自分が相続人になったことを知らない」人が多く、トラブルになりやすいのです。
親類縁者がいるときは、相続放棄をしたことをきちんと連絡するようにしましょう。
相続するかどうかは、3ヶ月以内に決めよう!
限定承認や相続破棄をするためには、「自分に相続の権利があると知ってから、3ヶ月以内」に「家庭裁判所に行って手続き」しなくてはなりません。
「故人が亡くなってから3ヶ月」ではなく、相続の権利があるとわかってから3ヶ月です。
なので、「順位がうえの相続人が相続放棄をして、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内」でも相続放棄は可能です。
期限を過ぎると自動的に単純承認することになるので、借金がある場合はとくに注意が必要です。
期限に遅れないように手続きしましょう。
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