不動産の贈与は本当に節税効果があるのか?事例で確認してみよう!
マイホームを持っている一般家庭でも、ちょっとした地主や資産家であっても、「財産のほとんどが土地・建物」になっているケースが多いです。
相続税の支払いは現金での一括納付が原則ですから、不動産ばかりある状態で相続がはじまると、「不動産を相続したは良いものの、相続税を納めるだけの現金が用意できない!」なんてことになってしまいます。
こういった危機的状況におちいらないようにするために、贈与がおすすめです。
ただ、不動産を贈与すると実際どのくらい節税になるのか、いまいちピンとこない人もいますよね。
そこで今回は「アパートを孫に贈与して、現金を贈与するよりお得に節税する」という事例をご紹介します。
現金が少ないため、手持ちのアパートを孫に贈与した水野さん一家
水野さんの財産は2億円。
所有財産の9割は不動産であり、このまま相続をさせると家族に莫大な負担をかけてしまうため、節税を考えていました。
法定相続人は、水野さんの奥さんに長男の2人だけ。
長男には孫娘と孫息子が1人ずついて、水野さんはお孫さんたちにも財産を残してあげたいと遺言をつくっています。孫に遺贈する予定なのは、評価額500万円のアパート2棟です。
このときの相続税額を考えてみましょう。
アパートを孫に相続させる場合の相続税
長男がいるので、お孫さんは法定相続人ではありません。
水野さんから孫への相続は、遺言書による遺贈という形になり、「相続税額の2割加算」が適用されます。
課税総額=2億円-(3000万円+600万円×2人)=1億5800万円
水野さんの奥さんと長男は半分ずつ相続する権利があるので、
1人あたりの相続分=1億5800万円÷2=7900万円
相続額が1億円以下の場合、税率は30%、控除が700万円なので、
7900万円×0.3-700万円=1670万円
相続税額の総額は、
1670万円×2=3340万円
です。
お孫さんが遺贈によって相続するのは、500万円のアパートですよね。
比率でいうと、2人のお孫さんはそれぞれ相続財産の2.5%を受け取ることになります。さらに2割加算の対象なので、
お孫さん1人あたりの相続税額=3340万円×2.5%×1.2=100万2000円
相続税は総額で「3373万4000円」かかる、という結果になりました。
では、ここから「水野さんがアパートをお孫さんたちに贈与する」とどうなるか見てみましょう。
500万円のアパートを、お孫さん2人に1棟ずつ贈与した場合
生前贈与ですので、贈与税を計算します。
贈与税の基礎控除は110万円、400万円以下の贈与に対する税率は20%で、控除は25万円ですから、
お孫さん1人あたりの贈与税額=(500万円-110万円)×0.2-25万円=53万円
続いて、相続税額を計算してみます。
- 水野さんの財産は2億円→1億9000万円へ減少
- お孫さんへの遺贈はなくなり、法定相続分通り奥さんと長男が相続をする
ため、
課税総額=1億9000万円-(3000万円+600万円×2人)=1億4800万円
1人あたりの相続分=1億4800万円÷2=7400万円
相続額が1億円以下の場合、税率は30%、控除が700万円なので、
7400万円×0.3-700万円=1520万円
相続税額の総額は、
1520万円×2=3040万円
さきほどの贈与税額が1人あたり53万円ですから、総額では「3146万円」となりますね。
結果を比べてみると、
○アパートをそのまま相続させた場合→3373万4000円
◎アパートを贈与した場合→3146万円
贈与の場合不動産の名義変更などで別途お金がかかりますが、230万円近くも節税できているので問題ありません。
水野さんは生前に持っているアパートを贈与するだけで、大きな節税に成功したのです。
単なる土地ではなく、収益性がある不動産を贈与することに意味がある
今回の事例で重要なのは、「収益性のある不動産を贈与した」ことです。
例えば、水野さんがお孫さんたちに、アパートではなくただの土地を贈与した場合どうなるでしょうか。
税額は、うえで行った計算の通り節税できます。ですが、お孫さんたちからすると「毎年固定資産税がかかるだけのなにもない土地を、贈与税を納めてまでもらった」ことになります。
贈与というよりも、お孫さんの負担になってしまう可能性が高いですよね。
その点、アパートは賃貸物件なので現金収入が見込めます。住民さえ確保できれば、「毎年固定資産税を払っても、家賃収入があるので収支はプラス」になるのです。
ついでにいうと、アパートの家賃収入が減るぶん、水野さん自身の所得税も安くなります。
もちろんアパートの贈与とは別に、小規模宅地等の特例を利用したり、不要な不動産を処分して生命保険にしたりなどの方法で更なる節税も夢ではありません。
贈与したほうが良い不動産をお持ちなら、あなたも贈与を考えてみませんか?
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