手持ちの現金を建物に変えるとなぜ節税になるのか?

相続税を節税するために、現金で建物を購入しよう!

「相続税が確実にかかるくらい、たくさん財産を持っている」

「不動産もあるが、現金が多いのでなんとかしたい」

と考えている方におすすめの方法を紹介します。

相続税の節税を考えるにあたって、悩ましいのが「現金」の存在です。

もちろん現金がまったくないというのも困るのですが、こと相続において、現金は少なければ少ないほど良いのです。

財産として価値を保ちつつ、現金を減らす。

そんな一石二鳥の手法としておすすめするのが、「手持ちの現金を建物に変える」というやり方です。

どうして建物が良いのか、土地ではダメなのか? といった説明をしつつ、詳しい内容を見ていきましょう。

現金より土地、土地より建物のほうが評価額は安くなる

相続において現金を減らすべきなのは、「現金のまま相続すると、使える節税対策がない」からです。

現金はどこまでいっても現金です。

あなたのお財布に入っている1万円が、ある日突然1000円になってしまうなんてことはありません。

1万円が1万円として評価される以上、節税のしようがないのです。

例外として配偶者の税額軽減などはありますが、基本的に「1000万円の現金を相続させると、1000万円×税率の相続税がかかる」のです。

ですが、土地の評価額は購入額や時価ではなく、「路線価」や「固定資産税評価額」で求めます。ざっくりいうと、時価の6割や7割程度の価額におさまります。

つまり、「1000万円で購入した土地を、600万円×税率の相続税だけで」相続できるわけです。

さらに、「建物の評価額は土地よりもさらに安く、固定資産税評価額の大体4割から5割」くらいなので、土地よりも建物のほうが節税効果が高いのです。

極端な話、同じ広さ、立地条件の土地が2箇所あったとして、「なにもない土地」と「建物がある土地」の場合、建物があるほうが総額が安くなることもありえます。

具体的には、5000万円で家を建てると、2500万円くらいで相続させられます。

評価額は2500万円でも、家そのものは5000万円かけて建てたもの。建物としての価値が減っているわけではありませんから、高いものを安く相続させられるのです。

マイホームは自分で買うより、親に建ててもらったほうが節税できる

ためしに、「親が1億円の現金を持っていて、あなたは5000万円のマイホームの購入を検討している」というシチュエーションを想像してみてください。

住宅ローンの申請も問題なく、あとは申し込みをするだけです。

自分の家なのだから自分で購入する。当たり前のことですし、ぜひとも自分で購入したいですよね。

ですが、節税を考えるなら「親の現金を使って家を購入する」ほうが良いのです。

あなたがあなたのお金を使って家を建てた場合、手持ちの現金がなくなり、莫大なローンを抱え、さらに将来「親から相続した1億円の現金に対する相続税」を払うことになってしまいます。

ここで、親にマイホームを購入してもらうとどうなるでしょう。

親が5000万円を支払って家を建てると、家の名義は親のものです。その一方で、

  • 将来の相続財産が1億円→5000万円に減って相続税の節税に
  • 親が5000万円で購入した家を相続する場合、固定資産税評価によって2500万円程度の不動産としてお得に相続できる
  • 自分はお金を使わないので、預貯金や納税資金、投資などにお金を回すことができる

など、いくつものメリットを得られます。

気分的に、親のお金を使ってマイホームを購入することに気が引ける方は多いと思いますが、自分で家を購入し、親から多額の現金を相続するより合理的な判断ともいえます。

「将来相続する現金を、前倒しでいま受け取る」と考えると、利用しやすいかもしれません。

居住用の物件よりも、貸家のほうがさらに評価額を安くできる

最後に、「賃貸物件の購入」について触れておきます。

将来現金を相続するより、マイホームを親の現金で購入してもらったほうが節税になるのは、説明の通りです。

加えていうと、「普通の住宅」よりも「賃貸用の住宅」のほうが、評価額は安くなります。

借地権や借家権などについては別のページで説明をしていますが、結論からいうと、賃貸物件を建てた場合「評価額は、固定資産税評価額の7割」になります。

5000万円で賃貸物件を建てると、「固定資産税評価額で2500万円」に、さらに「7割の1750万円」になるということですね。

例えば親があなたの住宅を購入し、さらに賃貸物件を購入していると、将来1億円の現金のかわりに、1億円の価値がある不動産を4250万円で相続できることになります。

応用として「小規模宅地等の特例」の組み合わせも考えて建物を購入していると、評価額は8割引きの850万円です。

現金を残すだけでは決して得られない節税効果を得られるのが、「現金を建物に変える」方法の魅力です。