「現金を使った自宅の立て替え」をうまく使いこなして節税しよう!
「現金を使って建物を建てると節税になる」とわかってはいても、じゃあ実際にどういう建物に建て替えれば良いのかわからない。
今回は、そんなあなたに「現金を建物に変えて評価額を下げて節税する」で説明した「現金→建物」による節税の応用を一つご紹介します。
二次相続に備え、自宅の立て替えを検討する南さん一家
南さんのお父さんが亡くなったとき、南さんは節税を考えて、お母さんにすべての財産を相続してもらいました。
「配偶者の税額軽減」を利用したので、相続税は無事ゼロ。
母子ともにこれで相続税とは無関係だ・・・と思っていましたが、ふと「母が亡くなると、両親の遺産をまとめて相続する南さんには莫大な相続税がかかる」ことに気が付きます。
南さんのお母さんがもっている財産は3億円、不動産と現金が半分ずつです。
相続人は南さん1人で、不動産はともかく多額の現金を相続するとかなりの負担になってしまうので、なんとか現金を減らすために自宅の建て替えを決めました。
自宅の立て替えで、「賃貸併用住宅」を選んで節税を目指す
南さんたちが選んだのは、「賃貸併用住宅」です。
賃貸併用住宅とは、例えば「2階建ての一軒家で、1階部分に南さん一家が住み、2階部分は他人に賃貸物件として貸す」といったタイプの住宅のことです。
自宅に賃貸物件がくっついているといえばわかりやすいでしょうか。
節税効果を期待するなら、建て替えるのは「普通の居住用住宅」でも良いですし、いっそ自宅を潰して「賃貸住宅」を建てても良いのですが、「賃貸併用住宅」に建て替えるのがポイントです。
どうして水野さん一家は賃貸併用住宅に建て替えるのか?
じつは、賃貸併用物件をうまく利用すると、「いくつもの節税方法を組み合わせられる」のです。
ちょっと具体的に考えてみます。
南さんが建てた住宅は、「南さんとお母さんが生活するための2LDK」に「単身者用の1Kが5戸」という構造で、面積で見ると3分の1が居住用、3分の2が賃貸です。
細かい部分は省略していきますが、このときに期待できる節税効果をざっと並べてみると、
- 9000万円使って建てた住宅の評価額は、固定資産税評価額なので大幅に減額
- 居住用部分、賃貸部分の宅地の両方に、「小規模宅地等の特例」を使えば評価額できる
- 賃貸部分は住宅の3分の2なので、土地の3分の2は「貸家建付地評価」として評価額を大体2割減にできる
- 自宅から少し離れたところにある駐車場を賃貸物件専用にすれば、その駐車場も「貸家建付地評価」できる
- 賃貸物件に人さえ入ってくれれば今後の家賃収入が手に入るのでお得
と、とても多くの節税ができるわけです。
とはいっても、居住用宅地と貸付事業用宅地の併用だと、面積などによってどのくらい特例が使えるのか細かい計算や調整も必要ですし、状況によって節税対策が取れない場合もあるので、税理士などに相談してよく考えてから利用しなくてはなりません。
賃貸併用住宅を選ぶことでいくら評価減できるのか、計算してみよう
並べただけではどのくらい評価減になるのかわかりづらいですよね。
そこで、具体的にいくら評価減できるのか、数字を入れて考えてみましょう。
建物の評価額
9000万円かけて建てた住宅のうち、居住用部分の評価額は、固定資産税評価額に基づくので大体半額になります。居住スペースは全体の3分の1ですから、
9000万円×1/3×0.5=1500万円
賃貸部分に関しては、さらに借家権なども差し引かれて7割になるので、
9000万円×2/3×0.5×0.7=2100万円
建物全体の評価額=3600万円
おおよそ半額以下になりました。
土地の評価額
土地全体の評価額は、もともと6000万円だったとします。
建て替えた家には南さんと南さんのお母さんが住むので、将来的に「小規模宅地等の特例」を使って8割引きするとして、
6000万円×1/3×0.2=400万円
賃貸部分に関しては、「貸家建付地評価」となるので評価額を2割引いて、相続のときに「小規模宅地等の特例」を使って5割引きにします。
6000万円×2/3×0.8×0.5=1600万円
合計して、6000万円の土地を2000万円まで減額できました。
駐車場の評価額
自宅の近所にある車5台だけ停められる駐車場は、借り手がいないので賃貸物件に入った人専用の駐車場にしました。
もともとの駐車場の評価額が800万円だとすると、「貸家建付地評価」で2割差し引けば、
800万円×0.8=640万円
となります。
結果をまとめると、3億円から2億440万円へ、なんと9560万円もの減額に成功し、しかも家賃収入も得られます。
賃貸の管理など問題がないわけではありませんが、自宅を建て替えるなら「賃貸併用住宅」も候補に入れてみてはいかがでしょう。
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