相続事例紹介|保険金を全て使わず収益不動産に組み替える

生活を守りつつ、相続した保険金をムダにしないための節税対策

節税対策は世の中に山ほどあります。

ですが、常に「こうすれば絶対に節税できてお得!」という方法はありません。

相続が起きるということは、身近な人が亡くなるということです。

精神的なショックや金銭的な負担、生活環境の激変、慣れない相続や納税への対処などを考えると、「どこまで節税をすべきなのか」「どんな節税をすべきなのか」は人それぞれ答えが違うのです。

とはいえ、原則として「現金を持っているよりも不動産、それも収益不動産に組み替えたほうが節税になる」のも事実です。

今回は現金を組み替えつつ、今後の生活のことも現実的に考えた節税対策を紹介いたします。

ご主人の保険金を収益不動産に組み替えた町田さん一家

町田さんのご主人は、突然の事故で急逝してしまいました。

ご主人は車が趣味だったこともあり、高額なカスタムカーやご主人名義の預貯金をはじめとして、保険金や会社からの退職金も出たので総額で1億8000万円相続しています。

一般的に考えるとかなりの大金ですが、2人いる息子はそれぞれ中学生と小学生。

町田さんは専業主婦だったため、これから育児と子育てを両立しなければなりません。

財産のほとんどは現金なので、当座の生活に心配はないものの、ご主人の残してくれた財産を使い潰すのは怖い。そこで、「保険金を収益不動産に組み替える」ことにしました。

「徹底的に節税する」よりも「生活できる範囲での投資」が節税に

シンプルに節税のことだけを考えれば、現金は納税に必要な金額だけ残し、できるだけ組み替えや贈与で減らしていったほうが良いです。

しかし、2人の子供がいて今後の生活があることを考えると、町田さん一家のような場合では「現金をすべて使ってしまう」のは避けたいところです。

町田さんが亡くなったとき、法定相続人は2人の子供になります。

相続がはじまるまでに、財産の総額を1億8000万円から基礎控除(3000万円+600万円×相続人数)の4200万円までにおさめておけば、相続税はかかりません。

1億8000万円のうち、現金は1億6200億円あったので、なにかあったときのための資金として3700万円は預貯金や定期預金として置いておき、残りの1億2500万円を組み替えに利用します。

賃貸マンションで生活していたため、自宅として分譲マンションを5500万円で購入して住居費を浮かします。自宅の評価額は2750万円です。

さらに残った7000万円は半分ずつにわけ、「収益不動産」の購入資金にあてました。

自宅マンションは将来「小規模宅地等の特例」で評価額を8割引きした「550万円」で相続させられます。

家計のなかでも比率の高い家賃がゼロになれば、そのぶん生活費に余裕が出ますよね。

3500万円ずつで購入した収益不動産、つまり賃貸マンションは、相続財産として見ると評価額は合計「3430万円」となり、なおかつうまく運営できれば家賃という現金収入も手に入ります。

不労所得といっても良い収入源があれば、生活に苦しむ可能性もぐっと下がります。

この時点で、町田さんがもつ財産の総額は、

1億8000万円→9480万円

に圧縮できました。

自宅と2棟の賃貸マンションの評価額は合わせて「3980万円」ですから、現金以外の財産1800万円と、万が一のために残しておいた現金3700万円を、生前贈与や生活費にすれば、基礎控除の範囲内なので将来相続税はかかりません。

手元に現金を残し、自宅を購入し、さらに2人の子供たちが相続で争うことがないよう収益不動産を同程度の価値を持つ2棟に抑えておく。

とても現実的な対策ができました。

将来のことを考えて、収益不動産を吟味する

じつは、町田さん一家が取った節税対策にはひとつ問題点があります。

「購入する収益不動産のチョイスを間違うと、節税どころか生活が苦しくなってしまう」点です。

多額の現金を収益不動産に組み替えるやり方は、ようするに不動産投資をするということです。

投資にはリスクがつきものですよね。不動産選びを間違うと、

「立地が良くなかったので住民が集まらない」

「内装やデザインに問題があって人気が出ない」

「建物の見えない部分がボロボロで修繕にかなりのお金がかかってしまう」

「築年数が古く、現在の法律の基準をきちんと満たしていない」

「10年は大丈夫なものの、20年後には運用できない可能性が高い」

といった問題が起こってしまいます。

節税を前提にした不動産の購入では、

  • できるだけ収益性が高い
  • 長く運用して利益を出せる
  • 補修や維持、管理、固定資産税などの出費も含めて赤字にならない物件

を見つけ出さなければならないのです。

もちろん、素人がぱぱっとマンションの情報サイトを見ても、こういった優良物件を見分けることはできません。

節税のために税理士に相談をしつつ、不動産の専門家を頼って物件を探すのがおすすめです。