古い貸家、収益性の低い賃貸事業は、相続を機に処分を検討しよう!
もし、お持ちの財産や、将来あなたが相続するであろう財産のなかに、
「古い、なんらかの問題がある、収益性がない」
といったものがある場合、いまのうちに財産の処分を考えることで節税できるようになります。
賃貸アパートや賃貸マンション、駐車場といった賃貸不動産は、誰か借り主がいて毎月安定した収益があってこその財産です。
築年数がうん十年になっていて、資産価値が減ってきている、家賃が安く儲けにならない、なんとなく続けているがこのままではいけないと考えているなどなど、なんらかの事情がある財産を持ち続けておくのは、あなたやあなたの財産を相続する人に大きな負担をかける選択なのです。
今回は、古い賃貸物件を処分して新しい賃貸不動産に建て替え、借入によって節税をする一家の事例を見ていきましょう。
母親から賃貸事業を相続する和田さん一家の節税対策
和田さんは、3人姉妹の長女です。
父親はすでに他界しており、母親は賃貸事業の運営をしています。
姉妹は皆実家の近くに住んでおり、膝を悪くして出歩けなくなった母親のお世話を姉妹で分担する毎日。
実質的に母親が賃貸物件の面倒を見られないので、現在12戸あるアパートのあれこれは長女である和田さんが取り仕切っています。
ですが、賃貸アパートはもう築40年、そろそろ建て替えが必要な時期ですし、母親は「最低限の家賃があれば良いから」と割安で人を入れてしまっているため、収益性は決して良くありません。
「あそこの部屋だけ家賃が安いのはどうしてだ!」といったトラブルも起きており、相続がはじまるまえに処分して節税をしよう、と考えつきました。
和田さんのお母さんの財産を調べたところ、財産の総額は2億7000万円。
3500万円の自宅、1億1500万円の不動産、そして現金が1億2000万円であることが判明します。
不動産の扱いはもちろん、多額の現金をどうやって節税するかが重要になってきます。
ただ、現金はできれば残しておきたいところです。
長女である和田さんが賃貸事業を相続することは家族で話し合っていますが、次女と三女に公平な相続をするためには、現金か現金からの組み替え資産を残しておく必要があるからです。
そこで、和田さんは「多額の借入による節税」をすることにしました。
訳アリ、古い、収益性の低い貸家を解体する
古くなった貸家を解体します。
貸家があるのは人通りも多く、お店もたくさんあって駅から近いという好立地なので、解体を決めた時点でも部屋は満室です。
なので、10ヶ月後までの立退きをして欲しいことを住民に伝えました。
立退きまでに余裕をもたせたこと、入居者が和田さんのお母さんに感謝してくれておりごねる人がいなかったこと、そして立退き料の支払いを積極的に行ったことで、解体までスムーズに終わりました。
かかった費用1500万円は、お母さんの現金1億2000万円から出すことで節税を行います。
貸家を解体したあとの土地、売却と立て替えどちらがお得?
つづいて、貸家を解体して更地になった土地の扱いです。
和田さん一家の場合、賃貸に向いている好立地だったことから新しい賃貸事業、新しいマンションの建築を決めました。
場合によっては土地を手放し、資産の組み替えを行ったほうが良い場合もあります。
周辺には単身者向けの賃貸が多く、また比較的どこも古い貸家ばかりだったので、和田さんは「1LDKと2DK、合わせて16戸ある設備の良いマンション」を建てることにします。
ご夫婦やカップル、余裕のある単身者を狙った選択です。
さて、ここからが本格的な節税対策となります。
相続のための現金を残し、多額の負債で節税する
節税を重視すると、「お母さんの現金をマンションの建築費用にあてる」ことで大幅に節税できます。
ですが、それでは姉妹で財産をわけづらいですよね。
なので、母親の現金を使わず「2億4000万円」のローンを組みました。
フルローンなのでマンションの建築に伴う現金の支出はゼロ、そして借入金は負債なので、課税財産からまるまる差し引いて税額計算をすることができます。
結果、新しいマンションの評価額は「6160万円」に、建物が大きくなったぶん「貸家建付地評価」できる部分も増えて「土地も880万円の評価減」となりました。
「小規模宅地等の特例」でダメ押しの節税
最後に、3500万円の自宅も「小規模宅地等の特例」によって80%割引にしてしまいましょう。すると、「2800万円の評価減」となります。
財産総額-立退き料&解体費用+マンションの評価額-貸家建付地の評価減-小規模宅地等の特例の評価減-借入金額
を計算すると、相続税が課税されるのは「3980万円」です。
法定相続人が3人なので、相続税の基礎控除は4200万円、つまり相続税はゼロ円になりました。
高額な借入には利子などのリスクもありますが、うまく使えば現金資産を残しつつ節税できるのです。
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