借金返済&納税資金を確保しながら将来の節税対策も!

相続がうまくいかなかった場合の納税・節税対策

相続問題を考えるとき、まれに起こってしまうのが、

「節税対策と納税の準備をしていたはずが、納税や遺産分割がうまくできない!」

というトラブルです。

贈与に資産の組み替え、財産の整理、遺言書の作成などなど、多くの節税対策はそのほとんどが生前に時間をかけて行います。

だからこそ、

「遺言はちゃんとつくってあるから問題ない」

と本人がいっており、その言葉をうのみにしていたばかりに「遺言の内容が偏っていた」「相続の内容が不公平なものだった」「遺言の通り相続をすると納税資金が用意できない」といった状況が生まれてしまうのです。

遺言や遺産相続の内容に関しては、事前に相続人全員を集めて良く話し合って合意しておくのが一番なのですが、そうできない場合もありますよね。

そんなときはどうすれば良いのか?

今回は、納税資金の準備に財産の整理、将来の節税まで考えた納税・節税対策をした岡田さん一家という事例を使って説明していきます。

納税資金と借金の返済をしつつ、将来の節税も考える岡田さん一家

岡田さんと3人のお子さんは、亡くなった旦那さんから6億円もの遺産を相続しました。

生前遺産相続について話をしたとき、旦那さんは「遺言でうまく対策をしているから問題ない」といっていたのですが、内容を確認してみると納税用に売却しようと考えていた不動産を長女と三女で共有していたり、不動産事業をするときの借金があったりと、内容に不備があることがわかりました。

遺言の通り相続すると、100%納税資金を準備できません。

町田さんは、納税資金を準備して借金を完済し、それから将来子供たちに起きる二次相続に備えた財産整理を行うことにしました。 

遺産の分割内容に手を加えて、借金の返済と納税資金の確保をする

今回の事例では、いきなり節税対策をすることができません。

なにはなくとも相続税の納税をする必要がありますし、借入金を放っておくとどんどん利子が増えてしまうからです。

手始めに、町田さんは3人の娘さんと話し合い、遺言に縛られない遺産分割に内容を変更しました。

具体的には、3億円ほどの資産価値がある貸しビルを借りている人と交渉して、店舗物件や土地の権利、近隣の駐車場を一括払いで売却したのです。

短期間で支払いをしてもらうために、相場より多少安い金額で決着をつけています。

これで、テナントの借り主は賃貸のお店と駐車場が安く手に入り、町田さん一家も納税資金と借金の完済資金を用意できました。

資産を手放して手に入れた譲渡税の支払いは、「特例」で待ってもらう

納税に関しては問題がなくなりましたが、ここで一つ新しい問題が出てきてしまいます。

それは、「不動産を売却して得た利益に対する譲渡税」の支払い問題です。

「配偶者の税額軽減」をつかって自身の相続税がかからない町田さんですが、その代わり譲渡税がかかってしまいます。普通に納税しても良いのですが、せっかくなのである「特例」を利用しましょう。

 譲渡税には、「事業用資産を買い替えたときの特例」というものがあります。

いろいろ条件があって難しいのですが、おおざっぱにいうと、「別の事業用資産を購入するために売った、手持ちの事業用資産の代金に対する譲渡税は、納税を将来に繰り延べできる」というものです。

「特例」の利用条件を満たすために、財産の買い替えで相続財産を整理する

特例の利用条件を満たすためには、新たに別の事業用資産を購入しなくてはなりません。

「テナントを売って相続税と借金を片付けた残りのお金」をつかっても良いのですが、それだと使える現金が大幅に減ってしまうので、銀行から8000万円ほど借入して現金を増やし、賃貸不動産を購入します。

手元の売却代金+借入金を使い、「二次相続に備えて、3人の子供たちが揉めないように賃貸不動産を3戸購入」しました。

現金→賃貸不動産への資産組み替えによる評価減と、銀行からの借入金という負債の追加で、合計2億5000万円ほどの評価減に成功です。

節税対策として、自宅を賃貸併用住宅に建て替える

納税も行い、子供たちに相続させる収益不動産も確保して節税しました。

ただ、町田さんは一人暮らしをしており、かなり広大な土地を独り占めしている状態です。固定資産税も高く、収益にならないので、自宅を潰して「賃貸併用住宅」に建て替えてしまいます。

3戸の賃貸不動産からの収益と、残っている現金を使って4階建て、12室のマンションを建てた結果、1億3000万円くらいの評価減に成功します。

ここまでの結果を総合すると、「3億8000万円の評価減」です。財産がこれだけ評価減になれば、もちろん二次相続のさいの相続税も安くなります。

相続において問題がいくつもあるときは、一つずつ目の前の問題を解決していくのが大切です。

まずは納税対策をし、それから節税対策に進むことを考えましょう。