節税対策と財テクを両立!財産を敢えて家族や会社に分散する

「財産を自分で所有しないこと」を考えれば節税になる!

「自分が所有していて、自分が自由にできる財産」がたくさんあるのが、いわゆるお金持ちというものですよね。

ですが、相続税の節税を考えるのであれば、「あえて自分の財産を家族や会社に分散する」という方法が意外と効果的だったりします。

財産は増えていけばいくほど管理が難しくなっていくものです。

もしもあなたが多額の財産をお持ちなら、今回ご紹介する三村さんという一家の事例を見て、今後の相続税対策を考えてみてはいかがでしょうか。

今回取り上げるのは、「財産を分散させ、農業から賃貸業へ事業を切り替えた一家の節税対策」です。

節税のため、農業をやめて賃貸業を営むことにした三村さんの事例

三村さんは、代々続いている農家の長男坊です。ただ、親は節税などをまったく考えない人だったので、親御さんの遺産を相続するさい相続税の納付や財産の分割で苦い思いをしています。

それ以来、30年ずっと農業と酪農業を続けてきましたが、三村さんももうご老人なだけに体を酷使する農作業はつらいとのこと。また、農業も酪農も近年収入は不安定になってきており、三村さんのお子さんも農業を続けるつもりはないそうです。

奥さんと3人の子供たちとも話し合いをして、この機会に財産を整理して相続税対策を行うことを決意しました。

三村さんが所有している財産は14億円で、財産の90%が農地で占められています。

一部の農地を除けば手入れができないので、農地の多くはすでに休耕地です。現金が1億円と少しなので、このまま行けば納税資金は用意できません。

ここから、納税資金を作りつつ財産を整理していきましょう。

自宅を建て替え、奥さんに贈与+小規模宅地等の特例

最初に行うのは、自宅の贈与です。

ただ、三村さんは2000坪もある広大な農地に自宅を建てています。今後のことを考えると農地にある自宅は使い勝手が悪いので、もっと交通の便の良い土地に建て替えることにしました。

5000万円ほど現金を使って、200坪ほどの土地に自宅を建てます。

そのうえで、建物と土地の権利の一部2110万円ぶんを奥さんに贈与しました。配偶者間の住宅資金の贈与は、2110万円まで贈与税が非課税になるため、余分なお金もかかりません。

また、自宅の建物は奥さんのものですが、土地のほとんどはまだ三村さんのものですから、相続のさいには「小規模宅地等の特例」を使って評価額を80%差し引けます。

結果として、自宅の建て替えと奥さんへの贈与、小規模宅地等の特例を利用することで、「1億3110万円」評価減できました。

大規模な農地、休耕地に賃貸マンションを建て、本格的な事業転換をする

農業を大規模にやっていたときは収入も多く良かったのですが、加齢による体力の低下もあり、長年の腰痛もあり、農業収入がある土地はごく一部となっています。

農地は一般的な宅地などに比べると評価額も少し安いのですが、かといって収入がゼロである以上持っていても固定資産税がかかるだけです。

空き地に動物が住み着いてしまったり、人が入り込んだり、砂埃が舞ってしまったりと状況も良くなかったので、休耕地を含めて使っていない土地に賃貸物件を建築することにします。

絶対に利用しないという土地はその都度売却して現金化しつつ、賃貸物件として条件の良い土地に関しては貸家建付地に転用します。

いくつかの金融機関に相談をして借り入れた4億円を元手に、小さめの賃貸マンションを4棟建築しました。

また、もともと自宅があった2000坪の農地も賃貸に転用します。土地の広さからかなり大規模なマンションが建築できることを利用し、駐車場完備のファミリー向け賃貸マンションを2棟建築しました。

このときの建築費用も、金融機関から10億円借入をすることで節税を狙います。

6棟のマンション建築と借入金、賃貸物件を建てた土地が貸家建付地評価できることをまとめると、「11億円の評価減」です。

自宅を使った節税も合わせれば、14億円あった財産はおよそ「1億7000万円」まで評価減できました。

増えた賃貸物件の管理法人を立ち上げて、所得と財産を分散する

6棟のマンション経営は順調で、入居者の申し込みも殺到しているので、三村さんは初年度からかなりの家賃収入を手に入れることになります。

多くの賃貸物件の管理を個人で行うのは大変ですし、家賃収入=現金ですから今後資産が増えてしまいますよね。

そこで、手持ちの賃貸物件の管理をするための会社を立ち上げ、奥さんや3人のお子さんを役員にして所得を分散することにしました。

これで、ゆくゆくは手持ちの賃貸物件を生前贈与したり、会社に売却して賃貸事業の展開を考えることも考えられます。

三村さんは、自分の財産を家族や会社に分散することで節税に加えてこれまで以上の現金収入という財産を手にしたのです。節税対策が一種の財テクになるのも、節税対策の面白いところですね。