莫大な現金資産の節税対策は「生前贈与」と「賃貸物件の運用」で!

莫大な現金資産を持っている人は、「生前贈与」と「賃貸物件の運用」をしよう!

あなたの身の回りに、「通帳の預金残高が増えていくのがとにかく好き!」なんて人はいませんか?

「お金持ちはケチだ!」なんて話もありますが、財産を持っている人の行動は、大まかに「持っている財産を使う」「取っておく」「さらに財産を増やす」という3種類しかありませんから、財産を貯めこむ人は驚くほど貯め込んでいるものなのです。

そういった方が万全の節税対策をされていれば良いのですが、もし特別なにもされていない場合、遺産相続をする人は目をむくような金額の相続税を納めることになってしまいます。

今回は、「まさかこんなに現金ばかり持っているとは!」と驚いて節税対策に取り組みはじめた篠原さん一家の節税事例を通して「巨額の現金資産はどうやって圧縮するのか」を考えていきましょう。

なお、これから節税に取り組む方のために、税率や各種の特例は「平成27年度以降に行う」ものとして計算しています。

25億円もの資産のうち、70%が現金という篠原さん一家の節税事例

篠原さんは、2男2女、4人兄弟の長男です。篠原さんのご両親は会社を起こし、一代で莫大な財産を築きあげていたのですが、残念なことに節税対策はしていませんでした。

数年前に篠原さんのお父さんが亡くなって奥さんと4兄弟で相続をしたのですが、相続税の支払いは篠原さん1人ぶんですら2億円を越えていたほどです。

なんとか税理士を入れ、お母さんの相続税は「配偶者の税額軽減」でなしにできましたが、「遺産に現金がたくさんあると大変なことになる」のは一家の共通認識になりました。

お母さんもご高齢なので、いつなにが起きるかもわかりません。

そこで、25億円の資産のうち、70%を現金が占めている状況からなんとか節税をしていくことになりました。

将来の相続に備えて、現金を不動産に組み替えて子供たちに生前贈与

節税をはじめるにあたって、条件をしっかり確認しておきましょう。

篠原さんのケースで抑えておきたいのは、

  • 母→子4人への相続税対策
  • お母さんの資産は25億円(うち17億5000万円が現金預金)
  • 自宅が老朽化してきており、そろそろ建て替えを考えている
  • 4兄弟で話し合い、長男の篠原さんがお母さんと同居して自宅を相続することになっている

ということです。

将来の相続を考えると、もしなにもしなければ相続税が「10億5730万円」かかりますので、とにかく17億円もある現金を減らしていくことにします。

まずは贈与です。長男の篠原さんは自宅や自宅以外の不動産などを相続するので、ほかの3人に対して3億円ずつ贈与しましょう。

ただ、現金で贈与した場合、贈与税が「4億8118万円」もかかります。これではもったいないため、「3人の子供たちに、それぞれ3億円で購入した不動産を贈与」します。

購入額は3億円でも、評価額になおせば「1億2000万円」ですから、贈与税は「1億8418万円」までさがります。

巨額の贈与をする場合、このように現金そのままよりも、現金で不動産を購入して贈与したほうが税金が安くなるのです。

これで、「9億円の評価減」ですね。

ローンなしで自宅を建て替え、現金資産をコンパクトに

9億円贈与しても、篠原さんのお母さんはまだ8億5000万円の現金を持っています。

現金を使うために、築40年近く経っており、老朽化してきている自宅の建て替えを検討します。

建て替える自宅はお母さんと同居する篠原さんに相続されるので、できるだけ資産価値の高い土地を探して、「3億円」で新しい自宅を手に入れます。

ついでに、「自宅をお母さんと篠原さんの共有名義にする」ために、お母さんから篠原さんに1000万円の住宅資金を贈与します。

「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」を使えば、1000万円は非課税で贈与可能です。

土地が2億円、建物を1億1000万円で建てたので、自宅の評価額は「1億8400万円」ほど。つまり、「1億2600万円の評価減」となります。

自宅の跡地に賃貸不動産を建て、さらに現金を減らして節税

以前自宅があった土地を持て余しているので、そこに賃貸マンションを建てましょう。

土地の評価額は「貸家建付地評価」により18%減となり、3億円で大型の賃貸マンションを建てると、評価額は「8400万円」、合わせて「2億2680万円の評価減」です。

これで、資産の大半を占めていた現金を大部分消費できました。

手に入れた自宅や賃貸マンションはすべて自己資金で購入していますから、ローンの返済を考える必要もありません。

財産の評価額は「25億円から12億4720万円まで大幅評価減」になっています。

このときの相続税額は兄弟4人で「4億2894万円」ですから、なにもしなかった場合とくらべて6億円近くもの節税に成功しました。

大量の現金があると相続税がたくさんかかって大変ですから、現金を減らして資産を圧縮することで節税を目指しましょう。