高まる遺言書の重要性|メリットとデメリットを理解しよう

故人が遺言書をきちんと残しておくメリット

「遺言」という字を見たとき、あなたはどう読みますか?

おそらく、多くの方は特に意識せずに「ゆいごん」と読んでいますよね。

法律豆知識ですが、実は法律用語では遺言を「いごん」と読む場合があります。

もちろん一般的にはゆいごんで構わないのですが、ゆいごんだと形式や内容にこだわらず、「故人がなくなる前に残した言葉や意思、遺書」と広範囲の意味を持ってしまいます。

相続において法的な効力のある遺言書は「ゆいごん」ではなく「いごん」の形式で残す必要があるので、ぜひ「いごん」について知っておいてほしいのです。

どうでもいいじゃん! と思うかもしれません。ただ、いごんではなくゆいごんを残していたために法的な遺言書として認められず、遺産相続が揉めに揉めたというケースも結構あります。

相続税の税制改正に伴い、多くの人が相続税対策をしなければならなくなった2015年以降、遺言書の重要性がますます高まってきています。

今回は、故人が遺言書を残すことのメリットをお伝えします。

遺産相続で家族が揉めない

故人にとって、誰それになにを残したいといった自分の意思が軽んじられたり、残された家族が遺産の分配で争うことほど悲しいことはありません。

その点、法的な効力を持つ遺言書があれば相続人同士が争うことを防げるというメリットがあります。

遺言書がない場合、遺産相続は相続順位と法定相続分など、民法の規程に則って行われます。遺言書がないということは、故人が遺産をどう相続させたかったのか知る術がないということなのです。

相続人同士で遺産をどう分割するか話し合った場合、「介護をがんばったんだからもっと貰えるはず!」「長男なのになんでこんなに取り分が少ないんだ!」「子供のために必要なんだから遠慮しなさいよ!」といった泥沼の争いに発展しやすいです。

遺言書があれば遺産の分割方法や割合で争う余地がないので、一部例外を除いて相続人同士いがみあうこともありません。

好きな人に好きなように遺産を渡せる

内縁関係にあった人に自分の財産を渡したい。息子のお嫁さんが一生懸命介護してくれたので遺産は彼女に受け取ってほしい。勘当した息子に財産を渡すなんてろくなことにならないから、遺産は全て妻に渡したい。

遺言書の内容で誰にどの遺産を渡したいのか決めていれば、法的には相続の権利を持たない子供のお嫁さんに相続をさせたり、特定の人に財産を渡したり、逆に相続させなかったりすることも可能です。

故人の意思を尊重するためには、遺言書の作成が不可欠なのです。

相続の各手続きがスムーズに進む

後で説明しますが、遺留分の請求でもない限り、遺言書の内容の通りに遺産相続が行われます。

誰がなにを受け継ぐのか、といったことで揉める必要がないので、相続税の計算や受け渡し、名義や登記の変更、申告など必要な手続きをスムーズに進めることができるのです。

相続税の諸手続きには期限が切られているものもいくつかあるので、ストレスもなく、期限に遅れることもなく手続きができるのはとても大きなメリットです。

法定相続分<遺言書だが、遺留分は無視できない

最後に、遺言書の注意点を一つお伝えします。

遺言書に書かれている相続の内容や方法は、法定相続分や相続順位より優先される、というのはすでに説明した通りです。

しかし、例えば「財産は全て寄付してくれ」という遺言があった場合、本来相続権を持っている妻や夫、子供などが一切遺産を相続することができなくなってしまいます。

いくらなんでもそれは良くないということで、相続人は最低限これだけは相続する権利を持ちますよ、という「遺留分」が認められています。

請求できるのは配偶者や故人の親、子供などだけですが、誰にも遺産を残さない、特定の一人にだけ遺産を相続させる、といった内容だと結果的に遺留分から争いにつながりやすいので、遺言書の内容には注意が必要です。