築年数が古い建物の相続は「不動産鑑定評価」で節税する

築年数が古い建物の評価は、「不動産鑑定評価」で見直そう

「遺産相続をすることになったけど、故人は節税していなかったみたいで相続税は高いし、遺産も不便な不動産ばかりで、わけづらくて困っている」

なんてことになったら、あなたならどういう対応を考えますか?

節税対策は、基本的に財産を持っている方が生前に行うことで大きな力を発揮するものです。いざ本人が亡くなってしまってからできることは、そんなに多くはありません。

ですが、なにもせずに諦めてしまうと、「多額の相続税の負担」や「使い道の良くわからない財産」「不公平な財産分与を原因とする、予想もしていなかった家族の不仲」などなどの問題につながってしまうのです。

ここは一つ「相続開始後でもできる節税方法」を学んでおいて、トラブルのない遺産相続ができるようになりましょう。

というわけで、「節税効果の事例紹介|「広大地評価」と「不動産鑑定評価」」に引き続き、土地の広大地評価と不動産の鑑定評価によって節税をした、前原さんの事例を見ていきます。

「広大地評価」と「不動産鑑定評価」で少しでも節税したい前原さん

前原さんのお父さんが亡くなってしまいました。

もともとお父さんは大きな会社の下請けとして工場経営をしており、社会的に成功していました。ただ、元請けの会社が事業を縮小したことから売上は激減、亡くなる数年まえに工場を畳んでからは、悠々自適に過ごしていたそうです。

結果、節税対策をまったくしていない工場の跡地や自宅、なんのために購入したのかわからない空き地、社員寮として持っていた古いアパートにわずかな現金を合わせた総額2億円の財産を前原さんと弟さんが相続することになっています。

遺産をそのまま相続した場合、一人あたり「1670万円」の相続税を納める必要がありますが、遺産の現金は1000万円ほど、半分ずつわけても、納税のためには金策をしなくてはいけません。

しかも、広大な工場の跡地やあちこちに点在している空き地は資産価値もばらばらで、不動産を共有でもしない限り公平な財産の分割は望めない状況です。

前原さんは、「できるだけ評価額を下げて節税」しつつ、「公平な遺産分割をし、相続税が支払えるようにする」ために節税することを決めたのです。

不動産を調べて、広い土地は広大地評価で評価減

不動産のなかで最も広いのは、1億円の工場の跡地です。

不動産の調査をプロに頼んでみたところ、「広大地評価」を適用できる広さがあることがわかりました。

周辺はここ数年で一気に住宅街化しているので、宅地利用に向いている状態でしたし、形も不格好だったので、住宅地にするにも道路を通して区画整理する必要があったためです。

将来的にはこの工場跡地を不動産業者に貸し付けることも考え、広大地評価をして「評価額を5750万円まで評価減」します。

築年数が古い建物の評価額を、不動産鑑定評価で見なおして評価減

前原さんのお父さんの遺産を細かく見てみると、現金1000万円、工場の跡地1億円以外に「元社員料の古いアパート5000万円」「700万円、800万円、1000万円の土地3つ」「1500万円の自宅」となっています。

自宅はさておいても、誰も住んでいないアパートはもう築35年、立派なボロアパートと化しています。一応住めることには住めるのですが、賃貸としてリフォームするのもお金がかかりますし、「固定資産税評価額が5000万円」というのはどうも納得しづらい。

不動産鑑定士を呼び、アパートの価値の見積もりをしてもらったところ、評価額は「3800万円」に下がりました。

使わない土地、使っていない土地は処分して公平な財産分与に利用する

ここまでの対策で遺産総額は「1億4550万円」まで減っていますが、いまだに兄弟2人が公平に遺産分割できる資産内容ではありませんし、相続税も「1705万円」かかるのでやはり金策が必要になってしまいます。

そこで、「800万円、700万円、1000万円」の土地に関しては不動産鑑定評価をしても評価額を下げられないことを調べたうえで、売却して換金しました。

売却額によっては譲渡所得税もかかりますが、こういった遺産分割の方法を「換価分割」と呼びます。

財産を公平にわけづらくしている不動産を現金にすれば自由に分割できるようになりますし、相続税の支払い金として利用することもできますよね。

前原さんのように、「評価額の減額を求める以外に、公平な遺産分割や納税資金を確保する」のも節税対策の効果の一つです。

たとえ利用価値のない財産であっても、「公平に分割できないのだから、適当に分割してしまえば良いや」なんてことをすると、ほかの相続人から思わぬ反発を食らったり、親族間のトラブルに発展します。

目の前の納税と、将来的なトラブルの両方から身を守るためにも、もしものときには節税対策をきっちりできるようにしておくのがおすすめです。