相続開始後の節税対策をするなら、真っ先に広大地評価を確認しよう
「相当に広い土地を相続する場合、節税対策は広大地評価が使えるかどうかが大きな鍵になる」
って知っていますか?
節税対策が盛んに叫ばれていても、誰もがばっちり準備して遺産相続にのぞめるわけではありません。
節税の準備をしていない状態で広い土地を相続することになってしまった、そんなときに頼りになるのが「広大地評価」です。広大地評価が適用できる場合、土地の評価額はだいたい半額くらいまで減額できるからです。
土地は、相続財産のなかでも現金についで「評価額が高い」財産です。
国が定める路線価×土地の面積で評価額が決まってしまうため、広い土地ほど金額が上がります。
建物がない土地というのはとくに難しい財産で、駐車場も空き地もほとんど評価額は変わりません。
土地を持っているだけで収益があがることなんてそうそうありませんから、「土地の評価額をいかにコンパクトにまとめるか」が節税の鍵になるわけです。
今回は、広大地評価が使えるかどうかでどのくらい納税額が変わってくるのか、事例の紹介と共に計算をしてみましょう。
広大地評価を適用して大幅な評価減と節税に成功した吉村さん
吉村さんは、数多くの不動産を持つお父さんと二人三脚で不動産の管理をしていました。
ただ、賃貸物件の老朽化や住民トラブルなどで疲弊してしまい、広い駐車場を一つ残して晩年にはほとんどの不動産を売り払っています。
駐車場は住宅街にあるスーパーに10年契約で貸しているもので、一括借上なので管理の手間もありませんし、収入も安定しているため、手放す理由がなかったのです。
そんななかでお父さんが亡くなり、吉村さんは節税をする間もなく遺産相続に直面することになってしまいました。
吉村さんに兄弟はおらず、お母さんも亡くなられているので相続人は1人です。
遺産総額は5億円、残されたのは1200㎡の広大な駐車場と、駅前の賃貸マンション一戸、自宅、そして現金2億円です。
駐車場の路線価は20万円/㎡で、評価額は2億4000万円、自宅が2000万円で、賃貸マンションが4000万円でした。
相続税額を計算すると、
- 5億円-基礎控除3600万円(3000万円+600万円×1人円)=4億6400万円
相続で手に入る遺産の金額が3億円から6億円のとき、税率は50%、控除は4200万円なので、
- 4億6400万円×50%-4200万円=1億9000万円
です。
現金が2億円あるため、とくになにもしなくてもなんとか相続税は納められますが、それでは生活が苦しくなってしまいますよね。
そこで、吉村さんは「不動産鑑定士」に頼んで駐車場を広大地評価できるか調べました。
「駐車場」を広大地評価して節税する
1200㎡の駐車場は、幸いにも広大地評価できる土地でした。
広大地の評価額は、もとの評価額に広大地補正率{0.6-0.05×(土地の面積㎡÷1000㎡)}をかければ計算可能です。
これを利用して計算すると、
- 路線価20万円×1200㎡×広大地補正率0.54=1億2960万円
となります。
「1億1040万円」の評価減ですから、相続税額は、
- 3億8960万円-基礎控除3600万円=3億5360万円
税率と控除額はさきほどの計算と同じなので、
- 3億5360万円×50%-4200万円=1億3480万円
です。
「不動産鑑定士」に調査を依頼して意見書を作ってもらう手数料や、土地を売却するときの手数料、時間などはかかりますが、一つの土地を「広大地評価」することで、吉村さんは相続税を5500万円ほど節税できたのです。
「広大地評価」できるかは、調べてみないとわからない
もし、あなたが相続する財産に広い土地が含まれているなら、広大地評価できるかどうかをぜひ一度調べてみてください。
どうしてかというと、広大地評価や不動産鑑定評価による評価減は、専門家の意見がないと認められないからです。広大地になるかどうかも細かい条件をいくつもクリアしなければならないので、到底土地の素人では判断できないのです。
ちなみに、例えば吉村さんの事例でも、「1200㎡の土地を持っていて、3分の1は宅地、3分の1がマンションの適地、残りが駐車場」といったふうに、用途が違っている場合は広大地にはなりません。
広大地評価は、周辺環境を含めて適用できるかどうかがわかれます。
土地を調査し意見書を書いてもらうまでに時間がかかるので、相続がはじまって財産の目録をつくったら、真っ先に広大地になりそうな広い土地がないかを調べましょう。
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