事例で確認!「広大地評価」と「鑑定評価」の節税効果
平成27年から基礎控除が小さくなり、相続税の課税ラインが大きく下がりました。
ただ、「税制が変わったから」と財産を持っている人が一斉に節税対策に取り組むかというと、そうではありませんよね。
節税対策の多くは、「財産を持っている人が生きているあいだにのみ行うことができる」ものですから、今後は「亡くなった親がまったく節税をしていなかった!」なんてケースが増えてくるわけです。
というわけで、「相続がはじまったあとからでもできる節税対策」をいくつか知っておきましょう。
今回のテーマは、「広大地評価」と「鑑定評価」による土地の評価減、それに伴う相続税の節税方法です。
兼業農家の父親から、農地を含む多くの不動産を相続した田山さん
兼業農家をしていた田山さんのお父さんが亡くなり、田山さんは兄と2人で父親の財産を相続することになりました。
離れて暮らしていたこともあって生前遺産相続についても話し合う機会もなく、残された財産を見てみると、農地や小さな賃貸アパート、駐車場、休耕地などが混在しており節税はまったく考えられていない状態でした。
遺産総額は4億円、もし田山さんとお兄さんがこのまま相続税の申告期限を迎えてしまうと、2人合わせて「1億920万円」の相続税がかかってしまいます。
お父さんの遺産には現金がほとんどないので、不動産を売って現金をつくるしかありません。ただ、農地などはなかなか買い手がつかないと聞いたので、できるだけ節税をしてみることにしました。
「不動産鑑定士」などに頼み、持っている土地を調査する
相続開始後にできる節税方法は、以下のどちらかにわけられます。
- 各種の特例(小規模宅地等の特例など)を利用して、相続税の課税額を引き下げる
- 不動産の評価額を下げる
田山さんのケースでは、財産の多くが不動産、それもかなりの広さがある農地や駐車場となっていますから、②の方法が有効です。
不動産の評価額を下げる節税方法を取るためには、まず「不動産鑑定士」などに依頼をして、土地の現状を正確に知らなくてはいけません。
次に、わかった土地の現状を調べて、
- がけ地になっているので評価減できないか?
- 道路に接していないのでもっと評価減できるのでは?
- 高大地評価をして土地の価額を下げられるのでは?
といった「評価額の見直し」をしていくのです。
広大地評価を適用できる土地があれば節税できる
田山さんのお父さんが持っていた不動産を調べたところ、評価額が1億2000万円で、面積が1000㎡ある駐車場に広大地評価が適用できることがわかりました。
広大地評価の説明は別の記事を参照していただくとして、この駐車場を広大地評価すると、評価額は「6480万円」まで下がります。
「路線価」or「倍率方式」>「鑑定評価」なら節税できる
土地の評価額とは、「その土地の利便性」をあらわすバロメーターです。
便利な土地や価値のある土地はより高額になりますし、使い道が制限されているなど、利用しづらい土地は評価額が下がります。
そして土地の価値なんてものは、周辺の状況などによって年々変わってしまうのです。
もちろん相続開始時点でついた評価額が間違っているというわけではないのですが、「細かい部分を突き詰めて考えれば、減額できる点が見つかる」こともありえます。
調査をして、路線価や倍率方式での評価額よりも低い評価額になる、という証拠があれば、土地の評価額を下げて節税できるのです。
田山さんのお父さんが所有していた土地には、実家の裏手にある山林が含まれていました。
この山林は調整区域、つまり「勝手に建物を建てたり、開発したりしないでくださいね、と法律で決められている土地」になっています。
よくよく調べてみたところ、現在の評価額は「倍率方式」で決められたもので、7000万円ほど。
しかし実際には都道府県知事の許可がないと開発できない土地ですし、山林なのでほとんど使い道がありません。そこで、不動産鑑定士に依頼して実情に則した評価額である「鑑定評価」を出してもらったところ、山林の評価額は「2500万円」となりました。
広大地評価と鑑定評価の利用で、相続税をいくら節税できたのか?
田山さんのお父さんの財産を調べ、「広大地評価」と土地の「鑑定評価」を行った結果、課税遺産総額は「2億9980万円」まで評価減できます。
軽く計算してみると、田山さんとお兄さんの2人ぶんの相続税額は「6912万円」となります。
節税対策をするまえの税額が「1億920万円」だったので、大体3000万円ほどの節税ができました。
亡くなってしまった方が節税対策をしていなかった、ということはどうしようもありません。
もし節税をしていない状態で相続をすることになったら、ぜひ今回の方法を参考にしてみてくださいね。
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