遺言書に種類があるってどういうこと?
コピー用紙とボールペンを渡されて、「さあ、法的に効力のある遺言書を書いてください!」といわれたとき、あなたは対応できますか?
いわゆる相続において意味をもつ「遺言書」には、これこれこの条件を満たしているものでないと認められない、という形式、種類がいくつかあります。
正しい遺言書の作り方を知らないと、せっかく用意した遺言書も意味のないメモ紙扱いされてしまうのです。
この機会に、ぜひ遺言書の種類と遺言書の作り方を知っておきましょう。
遺言書には、普通方式と特別方式があるのですが、特別方式のほうは今回あえて紹介しません。特別方式は遭難したなどの限定的な状況でしか使わないものだからです。
一般的に遺言書というものは、普通方式で作られています。そして、普通方式にはさらに3種類に分類されているのです。
3種類の遺言書
3種類の遺言書は、
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
という名前で呼ばれています。
早速、それぞれの種類の違いと作り方を抑えましょう。
①自筆証書遺言
故人が自分の意思かつ自筆で書き残した遺言書のことです。
極端な話、紙とペン、あとハンコがあれば30秒で作れるというとてもお手軽な遺言書です。
ただし、自筆証書遺言として法的な効力を持たせるためには、
- 故人が最初から最後まで自分で書いていること(パソコンで作って印刷、代筆はだめ)
- 遺言書を書いた正確な日付(○年○月吉日、など日付が特定できないものはだめ)
- 本人の署名と捺印がある
以上の条件が守られている必要があります。どれか一つでも欠けていると、有効な遺言書とは認められません。
また、自筆証書遺言が見つかった場合はまず家庭裁判所に持っていき、「有効な遺言書ですよ」と認めてもらう必要があります。
自筆証書遺言の作り方
- なんでも良いので、紙とペンを準備する
- 本人が最初から最後まで遺言の内容を書き、日付を書いて署名捺印
- なくさないように保管
以上です。必要な形式はこれだけなので、遺言書に使うのがチラシの裏だろうと手元にあったティッシュだろうと問題ありません。
ただ、きちんと本人の自筆で内容が確認できること、日付も何年の何月何日かまで明記しておくことが重要です。
複数の自筆証書遺言が見つかった場合、日付が一番新しいものだけが有効な遺言書になります。
②公正証書遺言
自筆証書遺言はお手軽な遺言書ですが、故人が自分で用意するものだけに、きちんとした形式が守られていなかったり、紛失してしまったり、はたまた悪意のある相続人によって改ざんされてしまったりするリスクをもっています。
そんなときに活躍するのが公正証書遺言です。
公証役場という役所の出張所のようなところに、公証人という法律に詳しい人がいます。この公証人に遺言の内容を伝えて、本人の代わりに法的に問題のない完璧な遺言書を作ってもらう、という方法です。
二人以上の証人が必要で、内容のチェックが入るので法的な問題もなく、原本は公証役場で保管してくれるので、紛失や改ざんのリスクもゼロです。
作るのに手数料がかかりますが、相続財産が1億円を越える、会社など重要なものを残した、故人の意思にもとづいて相続してほしいといった場合に非常に有効な手段です。
公正証書遺言の作り方
- 遺言の内容を決めて、公証役場に行く(寝たきり等動けない場合は公証人に来てもらう)
- 証人立ち会いのもと、遺言の内容を公証人に伝えて書類を作ってもらう
- 本人、公証人、証人の署名捺印をして、原本は公証役場に、コピーは本人の手元に保管
なお、証人になれるのは相続と関係のない人だけです。
弁護士や税理士と契約して証人になってもらい、故人の相続や遺言書の扱いを任せておくとより安心です。
③秘密証書遺言
秘密証書遺言については、知らなくても問題ありません。
一応説明しておくと、内容を伏せて証人をつけ、公証役場に「中身は法的に問題ないかはわかりませんけど、とりあえず遺言書らしきものはあります、とだけ証明しておきますね」と保管しておいてもらう遺言書です。
作るのがとても面倒で、その割にお金もかかるし内容もきちんとしたものかわからないし、とあまり良いところのない遺言書なので、手軽さなら自筆証書遺言を、確実性なら公正証書遺言を作ることをおすすめします。
家族のために遺言書を用意しよう
正しい形式の遺言書があれば、家族が相続問題で争うことはありません。
自筆証書遺言なら簡単につくれますし、何度か書いておけば正しい書き方も覚えられるので、間違いがあって遺言が無効になった、なんてトラブルも防げるので、できれば毎年作りましょう。
遺言書にマイナスなイメージをもつ方も多いと思いますが、遺言書は家族を守るために用意しておける、最も手軽な財産の一つなのです。
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