相続税の最高税率が上がる=富裕層に大打撃!
所得税や贈与税、住民税などにも税率というものが定められています。
日本の税金は基本的に「累進課税制度」になっていて、「手に入れる金額が多ければ多いほど税金も高くなる」のが特徴です。
税率なんてめったに変わるものではないのですが、2015年の法改正によって、相続税の税率部分に手が加えられていることをご存知でしたか?
大ざっぱにいうと、「高額な相続をする人からガッツリ相続税を取る」という方針になっているのです。
改正が行われるまえの相続税率
10%~50%
改正後の相続税率
10%~55%
と最高税率の部分が5%も増えているわけですね。
「なんだ、たったの5%じゃないか、そんなに変わらないよ」と思うかもしれませんが、ものすごく大きな変化なのです。
どのくらい相続税額が変動するのかはあとで説明するとして、まずは相続税率の変更点を詳しく抑えていきましょう!
法改正のポイントは「税率の引き上げ」と「金額の細分化」
法改正によって相続税の最高税率が引き上げられたのですが、じつは、それ以外の部分にも細かく変更されています。
税率を引き上げたといっても、単純に税率がアップしたのではなく、「相続額の取得区分をより細かくすることで、税率の適用を細分化している」のです。
ちょっとわかりづらい表現になってしまったので、できるだけ簡単に説明してみましょう。
従来の相続税率は、
- 1000万円以下10%、3000万円以下15%、5000万円以下20%、1億円以下30%、3億円以下40%、3億円超50%の6種類だった
- 控除は最高4700万円だった(3億円超のとき)
というものでした。
改正後の相続税率は、
- 従来の6区分から「3億円超50%」がなくなり、「2億円以下40%」「6億円以下50%」「6億円超55%」が追加され、合計8区分に
- 3億円以上の相続をするときの控除は4200万円に引き下げ
- 控除は最高7200万円に(6億円超のとき)
と、3億円前後でかなり区分が細かくなっているのです。
つまり、単純に「一人当あたり2億円以上相続する場合の相続税が高く」なっているということです。
控除額も重要です。
相続税額の計算をするときに使える控除額も、3億円から6億円のときに注目すると、なんと4700万円から4200万円まで引き下げられています。
控除が減ると、その分税額は増えてしまいます。
とはいえ、控除の最高額も引き上げされているので、メリットもあります。
実例で考えて見よう!夫が亡くなり妻1人・子2人のときの相続税
実例で考えてみましょう。
相続の条件は、
- 夫が亡くなり、8億円の遺産を相続することになった
- 相続人は、妻と成人している子供2人の計3人
奥さんは遺産の半分である4億円を、子供たちは残りの半分を2等分して4分の1ずつ相続することになります。
改正まえの税率で相続税額を計算してみると、
奥さん
4億円×50%-4700万円=1億5300万円
子供(1人あたり)
2億円×40%-2700万円=5300万円
となります。
奥さんは配偶者控除が使えるので、実質相続税額は0円になり、子供たちは総額で1億とんで600万円納税しなければなりません。
同じ条件で、改正後の税率を計算してみます。
奥さん
4億円×50%-4200万円=1億5800万円
子供(1人あたり)
2億円×40%-1700万円=6300万円
改正後も奥さんは配偶者控除が別途適用できるので、早めに申告すれば相続税はかかりません。
ただ、見事なまでに金額は上がっていますよね。
今回の計算では税率こそ代わっていませんが、区分が細かくなったことによって控除が減っているので、1億600万円から1億2600万円へと、2000万円も相続税の金額がアップしています。
不動産をたくさん持っている人、資産家は早めの対策が必須
税率がちょこっと上がっただけじゃないか、と思っていると、例のように「新制度になったことで相続税が2000万円も上乗せ」になってしまいます。
相続税の納税は、通常現金での一括払いしかできません。
キャッシュで1億を用意するのも大変ですが、さらに2000万円追加だと目もあてられませんよね。
資産をたくさん持っている人、とくに現金化に時間がかかる不動産をたくさん持っている人は、早め早めに相続税対策をしておかないと、遺族が悲しさとは別の意味で泣くはめになってしまいます。
しっかりと相続税対策をして、資産を残せるようにしていきましょう。
最近のコメント