条件緩和を見逃すべからず!相続税制の改正ポイント

相続税が増税方向に向かう一方で、条件緩和も実現!

「相続税が高くなる!」「相続税を納めなければならない人が増える!」

と話題になっている2015年からの法改正ですが、じつは「相続税は増税方向」に修正されつつ、「その他の条件緩和」も進められているってご存知でしたか?

相続税や贈与税の最高税率が引き上げられていること、基礎控除が40%も減ってしまうことから「政府は相続税収の全体的なアップ」を狙っていることがわかります。

しかし、もともと相続財産というのはその一家や故人ががんばって貯蓄してきた財産です。ただ単に税率を引き上げてたくさん取っていく、というのは気持ちよくはありません。

そこで、相続税を増税に向かわせると同時に「親、祖父母世代から子、孫世代への贈与をよりやりやすく」するための条件緩和がいくつか実現されています。

今回は、

  • 未成年者・障害者控除の増額
  • 相続時精算課税制度の条件緩和
  • その他使いやすくなった贈与

を紹介していきます。

未成年者控除の増額

日本では20歳になると成人として扱われます。

保護者の同意が必要なく、お酒も飲めますしギャンブルもできる。もちろん車も運転できますし、さまざまな権利を行使できるようになるわけです。

その一方で、未成年だといくつかの権利が制限されたり、逆に優遇されたりしています。

相続のさいには、「未成年者が財産を相続する場合、専用の控除が認められている」のです。

法改正のまえ、未成年者控除は「20歳になるまでの年数×6万円」でした。

今回の条件緩和によって、「20歳になるまでの年数×10万円」に増額されています。

計算式に起こすと、

(20歳-現在の年齢)×10万円=未成年者控除額

となります。

障害者控除の増額

未成年者と同様に、障害者の等級を受けている人は立場的に社会的弱者として扱われます。

そのため、「障害者控除」が設けられているのです。

法改正まえの障害者控除は、「85歳になるまでの年数×6万円」「障害者1級・2級(特別障害者)の場合は85歳になるまでの年数×12万円」が控除として認められていました。

これが、改正によって「85歳になるまでの年数×10万円」「障害者1級・2級の場合は85歳になるまでの年数×20万円」と増額されています。

(85歳-現在の年齢)×10万円(特別障害者の場合20万円)

と計算をして、計算した控除の分相続税が安くなるということです。

相続時精算課税制度も使いやすくなった!

「贈与税をかけずに財産を生前に渡しておいて、相続が始まったときに「贈与税」ではなく「相続税」の計算をする」という贈与の制度があります。

相続時精算課税制度です。

この制度についての詳細は別ページで説明しているので省きますが、今回の法改正によって、適用条件が緩和されて使いやすくなっているのです。

改正されるまえ、相続時精算課税制度を利用できるのは、

  • 財産を贈る人が65歳以上であること
  • 財産を受け取る人は20歳以上であり、財産を贈る人の子供であること

が条件でした。改正に伴って、

  • 財産を贈る人が60歳以上であること
  • 財産を受け取る人は20歳以上であり、財産を贈る人の子供か、孫であること

と変更されているのです。

早い段階から、子供だけではなく孫に対しても財産の移転が可能になっています。

その他の贈与も緩和されている

相続関係の法改正によって条件が緩和されている制度は、ほかにいくつか存在します。

例えば、子供や孫の教育資金として、最大1500万円まで信託銀行等に預け、都度贈与できる「教育資金の一括贈与」制度。

この制度では、留学先への航空券代や定期券の費用が認められるようになり、しかも贈与を受けるための手続きがより簡単に変更されています。

また、同様の制度として子供の「結婚・子育て資金の贈与」も新しく作られています。

細かい部分は省略しますが、最大1000万円まで、教育資金と同じように信託銀行当を経由して非課税で贈与できるのです。

各制度のより細かい適用条件や、どんなときに利用するとお得に節税できるのかは人それぞれで違います。

制度は使いこなしてナンボです。税理士などの専門家から意見を聞きつつ、一番楽で、一番得できる相続税対策をしていきましょう。