急がば回れ!不動産や土地の売却でできる相続税対策

相続した不動産・土地を売ると節税になる!?

相続税の納税は、基本的に現金での一括納付となっています。

遺産にたくさんの現金があれば、または相続人がたくさんお金を持っていれば良いのですが、遺産として残されているものは実家の土地と家くらいで、現金はほとんどない、といったケースも多いのが現実です。

例え現金がなくても、相続税がかかる人はなんとか現金を用意して納税しなければなりません。

どうしても現金が足りない場合、相続税の支払いで苦しいときは、相続した不動産や土地を売って現金に替えることを考えましょう。不動産や土地の売却は、やや遠回りではありますが相続税の節税につながるのです。

不動産や土地を売ると、譲渡所得という税金がかかる

どんな形であれ、税金というのは「あなたが儲かったとき」にかかります。

着なくなった服をちょこっと売ったくらいなら年間一定額まで非課税になりますが、土地や建物を売却すれば場合によっては数千万円の現金(儲け)が手に入りますよね。

この儲けに対しても、「譲渡所得税」という税金がかかってしまいます。譲渡所得税の計算は、ざっくりいうと、

(売れた金額-取得原価(売れた金額の5%))×20%

です。

ただし、

  • 相続税を支払っている(相続税を課税されている人)
  • 土地や不動産の売却は、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)から3年以内である

場合、支払った相続税の金額から譲渡所得を少し安くできるのです。

このシステムを「相続税が取得費に加算される特例」といいます。

どんなふうに譲渡所得税が安くなるのかというと、

支払った相続税×相続した土地・不動産の評価額÷相続した財産の総額=取得費への加算額

(不動産が売れた金額-取得原価-取得費への加算額)×20%

になるのです。

相続税の計算などはわかりづらいので省略し、わかりやすい数字を適当に入れて計算してみましょう。

あなたは総額1億円(現金1000万円、実家の土地建物9000万円)を相続して、1000万円の相続税を支払っています。

ただ、固定資産税の支払いなども大変なので、申告の期限から3年以内に実家を売却し、7000万円の現金を手にしました。

通常は、(7000万円-350万円)×20%=1330万円の譲渡所得税がかかります。

しかし、相続税を支払って相続した不動産の売却なので、

1000万円×9000万円÷1億円=900万円(取得費への加算額)

(7000万円-350万円-900万円)×20%=1150万円

の課税で済むのです。

この場合、譲渡所得税を180万円節税できることになります。

売却は登記をしっかり書き換えてから

土地を購入した、マンションを建てた、相続した。不動産があなたのものになったことを証明するためには、「あなたがこの土地・建物を持っている」という登録、「相続登記」をしなくてはなりません。

相続を行って故人の不動産や土地を手に入られる、という場合でも、きちんと相続登記を行って名義人をあなたの名前に書き換えなければ、土地を売買することはできないのです。

相続税の申告や納税などには一定の期限までに行わなくてはならないという制限がありますよね。しかし、相続登記には「いついつまでにしなくてはならない」といった決まりがないので、ついつい名義人の変更を疎かにしてしまっている人も多いのです。

相続登記をしていないということは、正式には故人の不動産や土地はあなたのものではない、ということです。勝手に他の人に登記されてしまう可能性もあり得ます。

登記を先延ばしにしていて良いことはありませんから、遺産分割協議が終わったあと、すぐに登記を行っておくことをおすすめします。

不動産の売却はタイミングに注意!

相続した不動産を売却して現金を作る場合、気をつけたいのがタイミングです。譲渡所得税を節税するためには、相続の期限から3年以内、つまり故人が亡くなってから3年と10か月以内に売却を行う必要があります。

3年10か月の期限を越えて不動産等を売却しても、この特例は使えないので注意しましょう。また、節税をするためには確定申告も行う必要があります。

どのタイミングで不動産や土地を売却するのが最も効率が良いのか、相続登記の方法は、などいくつも考えるべき点がある節税方法なので、できれば税理士などに良く相談したうえで実行するのがおすすめです。