戸籍上の婚姻関係の強み!配偶者控除(税額軽減)の相続税対策

故人の奥さん・旦那さんだけが使える特別な控除

故人の財産を相続したとき、あなたが支払うべき相続税の金額を求めるためは、

①課税される遺産の総額を求める

②法定相続分どおりに分配したと仮定して、一人あたりの相続税額を計算

③相続人各人の相続税額を合計して、相続税の総額を計算

④実際に相続した割合に応じて、納める税金額を決定

このように、いくつものプロセスを踏む必要があります。

節税対策の多くは、生前贈与など①の前までに行うものがほとんどです。しかし、実は③のところで使えるものもあるのです。それが、「控除」です。

控除とは、相続税を計算するとき、相続する遺産の課税額から差し引くことのできる割引のようなものだと思ってもらえれば構いません。

女性ならレディースデーで安く買い物ができる、学生ならラーメン屋で大盛りが無料になるなど、「特定の条件を満たす人だけが使える割引」が控除です。

そして、故人の奥さん、旦那さんといった配偶者の場合、とても特別な控除を使って大幅に相続税を節税することができるのです。

配偶者の税額軽減制度

故人の配偶者のみが利用することのできる控除のことを、「配偶者の税額の軽減」制度といいます。

この控除は、配偶者の相続財産の金額が、

  • 1億6000万円以下なら相続税はかからない
  • 1億6000万円以上でも、法定相続分以下の割合で相続していれば相続税はかからない

という制度です。

例えば、土地建物など総額で2億円分の財産を持っている人が亡くなったとします。

相続人は奥さん一人、息子さんが一人です。このときの法定相続分はお互い財産の半分であり、親子で話し合って、2億円を1億円ずつわけることにしました。

1億円の財産を総額するときは、税率が30%、控除が700万円あるので、親子で負担すべき相続税は、

(1億円×30%-700万円)×2=4600万円

もかかってしまうのです。

ここで配偶者の税額軽減制度を使ってみるとどうなるでしょう?

奥さんは、遺産総額の1/2、つまり法定相続分以下の割合で相続を行っています。

金額も1億円分で、配偶者控除の1億6000万円のほうが大きいので、相続税は0円です。

奥さんの分の相続税がかからないので、息子さんが2300万円納税すれば良くなります。

控除を使うことで、なんと相続税が半分になってしまいました。

配偶者の税額軽減制度を使うときの注意点

相続税の配偶者控除を適用することができれば、ほとんどの場合配偶者は相続税を支払わなくても良くなります。

ただ、これだけ効果の大きな控除だけあって、しっかりと利用条件を満たしておかなければ控除は利用できません。

税額軽減制度を利用するためには、

  • 内縁関係ではなく、法的に正式な配偶者であること
  • 相続の開始から10ヶ月(相続税の申告期限)以内に、誰がなにをどう相続するかきちんと合意し、実際に遺産を分け合っていること

が必要です。

補足します。

内縁関係の相手は故人が遺言で指定していない限り、法的には相続人ではありません。婚姻届を役所に提出し、戸籍上でもきちんと婚姻関係を結んでいること。これが最初の条件です。

また、控除を利用するためには相続税の申告期限までに遺産分割協議と遺産の分割を終えている必要があります。

要するに、「この財産は俺のものだ!」「いや、私のものだ!」なんて相続人同士で争っていて、誰がなにを相続するか決まっていない、実際に名義を変更したり、相続をしたりできていない、という場合には控除が使えないわけです。

なお、申告期限までに遺産の分割が間に合わなくても、3年間以内に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を提出すれば、分割できていなかった部分の遺産に対して控除を適用できます。

生前に話し合いや遺言の作成を!

配偶者控除を使おうと思っていたけれど、使えなくて相続税がかかってしまった。

こういったトラブルは、ほとんどが「遺産相続について生前に話し合っていなかった」ために起こります。

長男一人にだけ相続させている、介護をがんばったのに相続では全く考慮されていない、なにもしていなかった親族が法定相続分だけは主張してきている。

どれも、故人が遺言を残しておいたり、相続人を集めてどういった分配をするのが良いか話し合っておくことで十分に避けられる問題です。

どんなに優れた節税対策も、利用できなければ意味はありません。

相続税対策は、早い段階でどれを使えば節税になるか考え、きちんと用意をしておくことが大切なのです。