相続税の一括払いなんて無理!そんなときは延納もアリ
「えっ!? 相続税って現金一括払いなの?」
2015年からの税制改正に伴って、相続関係のことをいろいろ調べている方にとって、結構衝撃的なのが「相続税の支払いは、基本的に現金一括払いのみ」ということではないでしょうか?
じつは、相続税に関わらず、税金の多くは現金一括払いと決まっています。
とはいえ、実際に相続をして相続税を納めなければならなくなった場合、「現金一括払いは無理」となってしまう方もいますよね。
日本の一般家庭における相続財産は、「預金と不動産」です。
相続税は、不動産などのすぐに現金化できない財産もカウントして税額の計算をするので、「家や土地などはたくさんある資産家だけど、現金はほとんどない」「実家はあるけど預金はない」なんてケースもあるのです。
相続税を現金一括払いできない場合、どうすれば良いのか。
相続税を払うために借金をする、相続した財産を手放してしまうというのも一つの手ですが、「延納」という方法を取ることもできるのです。
相続税を延納するための条件4つ
延納をすると、最大20年間かけて相続税を分割払いできます。
携帯電話を購入するとき、電話機本体の料金を分割で支払う契約をしますよね。あれと同じようなものです。
ただし、延納はあくまでも緊急回避的な手段です。
一番良いのは現金一括払いで相続税を納めてしまうことですから、延納をするためには最低限4つの条件をすべて満たしていなければなりません。
- 相続税の課税額が10万円以上であること
- 現金で納税するのが難しく、延納を選ばざるを得ない金額であること
- 延滞税や利子税の金額に相当する担保を提供すること
- 指定の期限までに延納申請書、担保提供関係書類を税務署に提出すること
です。
一つずつ補足していきましょう。
①相続税の課税額が10万円以上であること
相続税の金額が、10万円未満である場合は延納することはできません。
遺産相続をして、現金10万円を用意できないというのは考えづらいですよね。
②現金で納税するのが難しく、延納を選ばざるを得ない金額であること
「延納ができるから延納をする」のではなく、「延納しなければ納税できないので、延納を選ぶ」わけです。
じつは現金で全額納税できるけど、延納します! というのは延納をして良い理由になりません。
③延滞税や利子税の金額に相当する担保を提供すること
基本は現金一括払いの相続税です。
相続が始まってから10ヶ月後の申告期限までに納税できない場合、延滞税がかかります。また、後で説明しますが延納をすると「利子税」も納めなければなりません。
最低限返済ができると証明するためにも、発生するであろう延滞税や利子税に相当する金額の担保(不動産など)を提供しなければなりません。
ただし、税額が100万円未満であり、なおかつ延納の期間が3年以内なら担保はいりません。
※2015年の4月1日から、担保不要な金額が50万円→100万円に増えています。
④指定の期限までに延納申請書、担保提供関係書類を税務署に提出すること
延納をする、と税務署に伝えずに延納することはできません。
きちんと必要書類を準備して、提出するようにしましょう。
延納をするためには、担保を預ける必要がある!
延納をする条件のなかに、利子税等が100万円を越えるか、延納期間が3年を越える場合は「担保」が必要だと説明しましたよね。
担保にして良い財産の種類は、きちんと決められています。
箇条書きで見てみましょう。
- 国債、地方債
- 社債、その他税務署長が認める有価証券
- 土地
- 建物、立木、登記済みの船舶で保険がかかっているもの
- ○○財団と呼ばれるもの
- 税務署長が認める保証人
要するに、売ればお金になるもの、ちょっとしたことでなくなるようなものではない、確実性のある財産であること、が担保の条件です。
なお、相続税延納のために提供する担保は、相続財産でない元から持っていた自分の財産でも構いません。
延納をするなら「利子税」のリスクに備えよう
クレジットカードで商品を購入したとき、分割払いにすると購入額より大きな金額がかかりますよね。
「一度で支払いできるものを、複数回にわけて支払いをする」リスク、待ってもらうためのメリットとして、利子を払うわけです。
延納も、クレジットカードと同じです。
分割したぶん、納税を遅らせているぶん利子税がかかるので、「相続税+利子税」を納めなくてはなりません。相続税額が大きければ大きいほど、延納期間が長ければ長いほど利子税の金額も大きくなります。
延納を選ぶと不動産などを手放さずに済むなどのメリットがあります。
一方で「利子税を加算しても確実に納税できるのか」を良く考えてから決断しないと、後で困るかもしれません。
延納しようかどうしようか迷ったときは、まずは税理士に相談をして、どちらのほうが節税になるか検討してみましょう。
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