農地を相続する人は「納税猶予制度」で大幅に節税しよう!
「実家は農業をしているし、そのうち脱サラして家でも継ごうかなあ。田舎でスローライフの始まりだ」
なんて考えている人は、要注意です!
日本は国土が狭く、食料自給率が低いという問題点を抱えています。第一次産業である農業は、後継者不足や土地不足、外国産食材の価格の安さなどに押されてしまい、大変な思いをしているのです。
それだけに、農業をしている人、これから農業を始める人にはさまざまな条件や優遇措置が設けられています。
農地は、土地ですよね。
農業をしている人は広い農地を持っているケースも多く、単純に相続税を課税してしまうと、ものすごい金額の相続税がかかります。農地を売却してお金を作ったり、農業を諦めなければならなくなったりするのは、できれば避けたいところです。
相続において「農地を相続する人が農業を続けると決めていて、一定の条件を満たせば相続税を猶予(もしくは免除)して良い」という制度を使えば、問題は一気に解決できます。
農地を持っている人が身近にいる人、今後相続をして農業をする人に、ぜひ知っておいて欲しい制度なのです。
相続税の「猶予」と「免除」の条件
農地相続における納税猶予制度には、猶予と免除があります。
まずは、制度を利用するために必要な条件を抑えておきましょう。
亡くなった人(被相続人)
亡くなるときまで、ずっと農業をしていること(畑を潰して賃貸マンションを始めていたりするのはNG)
農地を相続する人(相続人)
農地を相続したあと、申告期限までに農業を始めること
猶予制度を利用するための届け出等を行っていること
最低限、以上の条件を満たしていなければなりません。
ですが、猶予はあくまで猶予ですよね。相続税の支払いそのものがなくなっているわけではありません。
途中で農業をやめたり、農地を宅地に転用したりすると、そのぶん相続税の支払いがやってくる、ということも覚えておきましょう。
そのうえで、
- 農地を相続した人(相続人)が亡くなったとき
- 相続人が、農地を相続してから20年間ずっと農業を続けたとき
- 相続人が、自分の後継者に農地を生前一括贈与したとき
上記3つの条件を満たすと、相続税は完全にゼロ、免除されます。
20年農業を続けるなど、条件は厳しいです。なお、農地の相続税が免除されるまでは、3年ごとに「ちゃんと農業をしていますよ」と証明する書類を地域の農業委員会に提出しなければなりません。
手続きを怠ると、猶予制度も打ち切られてしまいます。
猶予制度が使える農地の条件
猶予制度を利用するためには、非相続人と相続人がそれぞれ一定の条件を満たさなければなりません。
そしてじつは、「農地」のほうにも特例を適用できるかどうか条件があるのです。
相続税の納税猶予制度が使える農地は、ざっくりいうと「農地として管理されている」必要があります。
- 作物等を育てていて、水やりや害虫の駆除などが行われている(肥培管理)
- 作物を作るのはちょっとお休みしているけれど、農地として使えるように準備している(休耕地)
- 植木畑として、苗木を肥培管理しつつ育てている
といった農地なら制度の利用が認められます。
逆に、制度の利用が認められない土地というのは、たとえば、
- 家庭菜園
- 管理されていない農地(放置されている土地や、石材等があって農地に利用できない部分)
- 肥培管理をされていない植木畑
- 温室(地面をコンクリートで固めているなど、耕して農地として活用できない状態になっている)
- 農地以外の敷地部分
などです。
農業と一緒に畜産をされている方も多いと思いますが、鶏小屋などの畜舎も適用対象外です。
実際には、ケースバイケースで農地の状態も広さも違います。
専門用語も多いので、農地の相続がありそうな場合、相続が始まるまえから猶予制度が使えるのはどこからどこまでか、調べておくと良いでしょう。
農地の相続をするなら手続きは迅速に!
相続税の申告期限は、農地を持っていた人が亡くなってから10ヶ月と決まっています。
猶予制度の利用条件には、「申告期限までに農地を相続した人が農業を始めること」がありますから、手続きは急いだほうが良いです。
どんな遺産があるか調べて、評価額を出し、相続人を集めて誰がなにを相続するか話し合って実際に遺産分割を済ませてしまう。
そのうえで、農業をするという手続きをして、ようやくほっと一息です。
制度の利用を考えるなら手続きは迅速に。
相続トラブルなんてもっての他ですから、できれば被相続人が生きている間に遺産分割協議をする、遺言を作るなど対策しておいて、納税時に猶予制度を使うのが一番良い方法です。大幅な節税を目指しましょう。
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