高確率で相続トラブルに発展すると言われる「土地の共有」

土地を相続人で共有するのはできるだけ避けよう!

「土地を売らなくても相続税は払えるし、誰かが使うわけでもない。親父の土地は、皆で共有しておこう」

「土地なんて好き勝手に分割できないんだから、皆で一つを共有するってことにしておけば良いんじゃない?」

なんて具合に土地を共有してしまうと、いずれ泥沼の争いが始まる可能性が高い、ってご存知でしたか?

現金や貴金属とは違って、不動産、とくに土地は「相続人それぞれにきれいに分割する」のが難しい財産です。

そこで、「土地の権利を3分の1ずつにわけて、それをお互いの持ち分として土地を共有しよう」という対応をしても良いことになっています。

わざわざ一つの土地を分筆することもなく、相続人同士仲が良ければトラブルになることだってきっとない。

そう考えて共有をするわけですが、このページを見ているあなたには、土地の共有を避けて欲しいのです。

「土地の共有は高確率でトラブルに発展するから」です。詳しいことは、これから説明していきます。

共有の土地は、所有者が自由に使えない

 名義を共有している場合、土地を売ったり、建物を建てたり、駐車場にしたりするためには「所有者全員の同意」が必要になります。

例えば、お父さんの土地を3人兄弟で共有したとします。

長男はそのまま土地を保持したい。次男は土地を売って現金をつくりたい。長女は駐車場にするか賃貸マンションにでもして、少しでも収入の足しにしたい。

こんな感じで意見が割れてしまうと、全員正式な土地の持ち主なのに、自分の好きなように土地を使うことができないのです。

さらにいうと、土地を所有していると、固定資産税がかかります。

持っているだけでお金がかかるのに、なんとかするためには所有者全員を説得しなくてはならない。話し合っている間にまた固定資産税の通知が来て・・・なんてことになってしまうわけです。

最初は仲良く共有していても、時間が経つことで経済状況が変わったり、共有していた相続人が亡くなって権利を別の人が相続したりしていけば、どうなるかはわかりません。

個人の自由にできない財産は、トラブルのもと。

最初から土地を分筆するなどして、共有の土地をつくらないようにしたほうが良いのです。 

よくある共有名義トラブル

トラブルになるといわれてもすぐには実感も湧きませんよね。

そこで、土地を共有していると起きるトラブルを2つほど紹介してみます。

トラブル①:所有者の1人だけが土地を使っているので共有をやめたい

お父さんが亡くなり、実家の土地は2人の兄弟で半分ずつ共有して相続することになりました。

ただ、次男は県外で生活しているので、兄1人が実家で生活をしている状況です。

持っている土地には毎年固定資産税がかかります。兄は毎年、「この土地の持ち分は半分お前のものなんだから、固定資産税も半分払ってくれ」と請求をしてきます。

家の修繕をしたときも半額を請求され、弟さんは「どうして自分が住んでもいない土地のために、お金を出さなきゃならないんだ!」と思い、兄に「自分の持ち分を買い取ってくれ」と話をしました。

しかし兄は同意してくれず、話し合いは平行線・・・解決の目処が立ちません。

トラブル②:使っていない土地を処分したいが同意を得られない

お父さんが亡くなったとき、広大地評価できる大きな土地が一つありました。

相続人だった長男と長女、妹の3人で土地を分筆してしまうと、広大地評価をして安く相続することができなかったので、名義は共有しています。

しかしこの土地、3兄弟の誰も使っていませんし、賃貸物件なども建っていない完全な空き地です。

末っ子の妹さんは税金だけがかかるので土地を手放してしまいたいと考えていますが、長男は「いつか大規模に開発するかもしれないから」と売却を拒否。長女は「駐車場にしよう」といっています。

話し合いはまとまらず、広大な土地を持て余している状況です。

共有した土地を分筆するとき、場合によっては別途税金がかかることも

紹介したように、土地の共有はちょっとした意見の違いや好みから、長い長いトラブルに発展しやすいというデメリットを持っています。

しかも、「共有している土地を分割する」場合、「土地を分割(分筆)するための手数料」に加えて、「譲渡所得税」や「贈与税」がかかってしまうこともあるのです。

土地の分割はとても難しい作業です。

楽に分割できる場合は良いのですが、いざ分割してみると、持ち分と同じ割合で分割できなかった、形が悪くなってしまい、評価額が下がってしまった、なんてことだってあり得ます。

もちろん、「お父さんが亡くなり、お母さんと一人息子が共有で実家の土地を相続する」など、ごく一部ですが土地の共有がメリットになるケースもあります。

ただ、不要なリスクを抱え込まないためにも、土地の共有は避けるべきなのです。